2025年6月17日火曜日

秘密の森~主役たちの特徴~

他のペ・ドゥナ出演作品の話に移る前に、『秘密の森』の特徴や印象的な内容について、くどくどと記しておきます。

 ◎主役が天才ではない

検事ファン・シモクはとてつもなく頭が切れますが、超能力者でも天才でもなく、計画犯に翻弄され間違いを犯します。
シャーロック・ホームズから杉下右京に至るまで刑事・探偵物の主人公は、なにもかもお見通しですが、ファン・シモクもペ・ドゥナ演じる刑事のハン・ヨジンも事件の森の中をさ迷い続けます。

シモクは、冷徹に相手かまわず予断をもたずに疑いますので組織内で軋轢も生じます。

◎粋がらない”女”刑事

ハン・ヨジンは、ドラマの”女刑事”にありがちな突っ張って、粋がって、変わり者で、無鉄砲で身勝手なキャラとは正反対です。
男の刑事たちに混じって淡々と普通に働いて、協調性があり、頑張り屋なので、彼らからも一目置かれています。(突っ込むときは、大胆に突っ込みます)

第一話目で検事(ファン・シモク)に容疑者を奪われてくさっているハン・ヨジンを同僚刑事たちがからかいます。
ヨジンが、検察にいって文句を言ってくると言って外出しそうになると、腹に一物ある同僚のキム刑事が、彼女の名前を呼ばずに「ちょっとちょっと」(アマゾンプライムでは「おい」)と呼びかけます。
そばにいたチャン刑事(彼は、警察内でのヨジンのバディになり、組織においてハン・ヨジンともっとも深い信頼関係になります)が「(キム刑事の態度は)失礼だな」と言うとヨジンがおどけながら敬語の挨拶をして出かけます。

おどけた仕草もキュート

いたずらっぽい仕草が、とても可愛らしくて素敵です。

余談ですが、この時のチャン刑事の発言の翻訳がアマゾンプライムとネットフリックスで異なっています。
上記の場面で、ネットフリックスのチャン刑事は「なにが”ちょっと”だよ。敬称で呼べばいいのに」と話しますがアマゾンプライムのチャン刑事は「もう2カ月になるのに”おい”はひどいな」と言います。

あたしは、最初Netflixで見たので、ハン・ヨジンと同僚たちとの距離感がわからず、もう長いこと慣れ親しんだ同僚仲間と思い込んでいましたが、実際には赴任してまだ二か月しか経っていないことがわかりました。

後に、他の同僚と異なりハン・ヨジンは、警察大学を卒業した超エリートで、本来であれば現場で泥臭い仕事をするような立場ではないことが知れます。
アマゾンプライムでは、この下りしか視聴していませんが、おそらく多くの部分で翻訳が異なっていることと思います。韓国語がわかればなぁと悔やみました。

そんな警察のチームですが、周囲の男性刑事たちも、『リンダリンダリンダ』の高校の後輩たちのように、紳士で悪質なセクハラやパワハラがありません。

ハン・ヨジンは、韓国ドラマの美女ヒロインのようにツンデレでもなく、終始自然体で捜査関係者や事件関係者にも優しくて包み込むような慈愛にあふれています。
そして、恫喝にも動ぜず、悪に対して向き合うときのきりっとした表情のかっこいいこと。

彼女とファン・シモク検事が最初に遭遇する場面(現場の玄関でただすれ違うだけ)は、(大女優ペ・ドウナと知らなければ)地味過ぎてとてもヒロイン登場の場面とは思えません。

余談ですが、「普通にはたらくドラマの刑事」という点について、読売テレビでオンエアされた『彼女たちの犯罪』に登場する上原刑事(野間口徹)に扱いが少し似ているなと思いました。

ある犯罪に手を染めてしまっている同僚の熊沢刑事(石井杏奈)は、一見凡庸に見える上司、上原の実力を当初侮っています。

しかし、上原の真の優秀さ、粘り強い捜査に、彼女たちはじわじわと追い詰められていきます。

◎恋愛無し

ファン・シモクとハン・ヨジンは、恋愛関係になりません。
二人の関係性は、刑事ものによくある”バディ”ほど”熱く”もない、とてもデリケートな距離感です。(心の奥底では、ちょっとだけ好き同志かも)

ハン・ヨジンの懐の深い性格のおかげで、ファン・シモクの固まった心が少しずつ溶けていきます。(心、脳みそ?のリハビリになっている?)
そして、シーズン2の最終話で彼らの信頼関係がゆるぎない物に育ったことが描かれます。(ファン・シモクの台詞ですが、泣いてしまいました。感動的なシーンです)

◎過去のトラウマのないハン・ヨジン

ハン・ヨジンは、これまたありがちな過去のトラウマ(幼い頃、親がどうしたとか)などを抱えていません。一般的な主役の刑事は、くせが強く、秘密の過去があります。
その秘密が事件と深いかかわりがあり話数が進むに従い謎が明らかになっていくというのが定番ですが、彼女は高学歴のごく普通に就職した職業刑事(のよう)です。

この要素については、ネットで拝見したNoteの記事に掲載されていたハン・ヨジンのキャラクター設定についての本人インタビューにもありました。(イタリックがインタビューアー。色の字がペ・ドウナ。いずれもGoogle翻訳に少し手を加えてあります。太字は私)

最初にこのキャラクターを受け入れてストーリーに取り組み始めたとき、どのようなストーリーを想像していましたか?

当初、ハン・ヨジンのキャラクターは、独自の設定で台本に書かれていました。しかし、制作陣と何度も議論を重ねた結果、オリジナルのキャラクター設定を削除することにしました。俳優としての視点からすると、これは大きな助けになりました。特定のキャラクター設定があると、状況に応じた彼女の反応や言葉が利己的になりかねません。しかし、その固定観念が取り除かれたことで、彼女は透明になりました。そこに想像力の余地が生まれました。彼女はきっと子供の頃、漫画やシャーロック・ホームズのような推理小説を読んで夢を育んだのだろうと思いました。個人的な境遇やトラウマではなく、純粋な心で社会正義を追求するキャラクターです。

 私も「秘密の森」は仕事についての物語だと感じました。まさにおっしゃった通りだと思います。ペ・ドゥナもチョ・スンウも、根底には純粋な仕事への情熱があり、下心もなくひたすら突き進んでいました。だからこそ、一部の視聴者が期待していたようなラブストーリーは生まれなかったのかもしれませんね(笑)。

 ハン・ヨジンは、実は裕福な家庭の娘なのかもしれません。刑事として忙しく働きながらも、デザイナーブランドの服を着て、ペントハウスに住むことを夢見ているんです(笑)。そんなオープンなところが、ある意味ファンタジーなキャラクターなのかもしれません。「こんな人、現実にはいないと思うけど、もしいたら世界はもっと良くなるはず」と思わせてくれます。 

相方のファン・シモク検事には持病の治療という特殊な過去がありますが、ドラマ冒頭で説明が行われます。

ハン・ヨジンの学歴という要素はシーズン2で組織内での彼女のキャリアに大きく関係してきます。

2025年6月16日月曜日

ペ・ドゥナの完成形

あたしは『秘密の森』の後、他の韓国ドラマも見るようになりました。

どの作品でも出演者たちが、大声でがなり立てたり、怒鳴り合ったりするシーンが多い印象でしたが、ドラマの主役たちはいずれも物静かで思慮深く振舞います。

こうした典型的ながさつなやりとりはドラマ上のカリカチュアで現実には韓国人たちも落ち着いた人格を好ましいと思っているからこそ主役は落ち着いた性格で描かれているのかと思います。

常に冷静な二人
『秘密の森』の主役たちも常に冷静です。

さて、あたしが『秘密の森』でそのキュートさに参ってしまったペ・ドゥナは、公開時の年齢が38歳。シーズン2は、41歳です。
41歳で、こんなにチャーミングでかっこよかったら、若い頃はどれだけ可愛いかったのだろう?(笑)

そう考えたあたしは、これまでの彼女の作品を巡ってみることにしました。

余談ですが、歳を取るメリットのひとつに好みの相手の年齢幅が広がることがあります。
今のあたしにとっては50代の人も年下ですので、可愛く見える人もいます。
そこから犯罪を犯さないで済む年齢まで恋愛対象のターゲット(笑)が広がります。(現実の話であるとか相手側の事情は別です。そこを勘違いすると大変なことになりますので自制してください)

初期の作品のペ・ドゥナは、それはそれはとろけるようにキュートです。そんな昔と比べると『秘密の森』の彼女は確かに年相応になっていますが、あたしの目にはむしろそれが大きな魅力になっています。*1

刑事事件を追う深刻な内容のためともすれば陰鬱になりがちな内容のドラマですが、剽軽な実務官や同僚のチャン刑事、そしてペ・ドゥナの暖かい演技がドラマの空気を明るくしてくれています。

初期作品の演技と比べると『秘密の森』で見せるハン・ヨジンは緩急に富んでいて、自然で自在な仕草、コミカルとシリアスが絶妙なバランスでハイブリッドに熟成されたペ・ドゥナの完成形だと思います。

*1 : 2017年の『ペ・ドゥナ、7年ぶりの韓国ドラマ出演について言及「冷静な評価を受ける時期が来た」』という記事では、『秘密の森』のオンエアにあたりインタビューでこう答えています。

もうそろそろ冷静な評価を受ける時期になったと思った。ここ7年間で生じたシワも見せたいし、世間から演技に対する評価も受けたかった。

2025年6月14日土曜日

秘密の森 ~視聴のきっかけ~

Netflixのホーム画面には、多くの作品のサムネイルが所狭しと並んでいます。

その中の数作になんとなく気になる(要するに好みの顔の)女性の写真が出ていて、それがペ・ドゥナでした。(『秘密の森』の他に『Sense8』や『Rebel Moon』など)

見覚えがある顔だと思っていたら、以前、劇場で観た『クラウド・アトラス*1』に出ていた人だと思い出しました。

それまでに見た韓国ドラマは一時期話題になった『愛の不時着』だけでした。
韓国ドラマは、確かに面白いのですが、なにぶん一話が”長い”。話数も多い。
さぁ見るぞ!と気合をいれないといけないというので、『愛の不時着』以外の作品に関しては長い間敬遠していましたが、ペ・ドウナの顔写真に惹かれ重い腰を上げて見始めました。

ところで、前回のポストでペ・ドゥナが「可愛い」、「美しい」と言った舌の根も乾いていませんが、彼女はあたしの目には美しくても、万人受けする美人ではないと思います。

ペ・ドゥナを知らない友人に彼女の写真を見せたところ「なんで?」というような反応が返ってきました。ま、所詮は好みの問題ですが、友人が彼女の演技を見たら考えが変わること間違いなしだと思っています。

作家の横田創氏は、前掲書『ユリイカ』に寄せた「神と見紛うばかりの」というエッセイで、ペ・ドゥナの鼻を「団子っ鼻」、目のあたりを「腫れぼったい」と書いていますが、同時に彼女の「広いおでこ」や「まんまるの目」について愛にあふれた書き方をしています。

ぼんやりしていても、ぱっちりしている。それも人形の目のようにぱっちりしている、のではなくて、どちらかといえばカエルやフクロウの目のようにぱっちりしている。

褒めているのか貶しているのかわからない書き方ですが、でも彼女を大好きな気持ちが伝わります。
ペ・ドゥナが一点を凝視している時の目と表情の可愛さは、横田氏が言うように神々しくもあります。

*1: 『クラウド アトラス』(2012年)は、デイヴィッド・ミッチェルの同名小説を原作としたSFドラマ映画。19世紀から未来の文明崩壊後までの6つの時代を舞台に、それぞれの物語が複雑に交差する。キャストは各時代で異なる役柄を演じ、1849年、2144年、2321年の物語をウォシャウスキー姉妹が、1936年、1973年、2012年の物語をトム・ティクヴァが監督。

2025年6月13日金曜日

ペ・ドゥナ病に罹患

韓国の連続ドラマ『秘密の森』を見てから俳優のペ・ドゥナの大ファンになりました。

これまで特定の作家や作品のファンになったり、ミュージシャンを気に入ることがあっても、芸能人の熱烈なファンになるという経験がありませんでした。

早い話がペ・ドゥナに恋してしまったのです。
とはいえ、彼女のファンがみな口を揃えて言うように、彼女の場合、不思議なことに”邪な”妄想(笑)が生じません。ただ純粋に好きなだけです。

演技力の凄さに。見た目の可愛いさと美しさに。

例えば、彼女の初期の出演作『プライベートレッスン 青い体験』は、青春ドラマとは言え一種のアダルト作品です。ペ・ドゥナの裸やセックスの場面を見せられますが、なぜか心に思うのはナムオク(ペ・ドゥナ)に幸せになってほしいという気持ちになってしまうのは、エロス作品にペ・ドゥナを起用した製作者の失策でしょう(笑)

彼女の可愛さを一番よく伝えてくれているのが『空気人形』の是枝裕和監督と『リンダリンダリンダ』の山下敦弘監督のお二人の対談です。

是枝「普段も可愛いですからね。みんな好きになると思うよ、本当に(笑)。現場にいたおじさんからおばさんからおじいちゃんから子どもまで、みんな嘘偽りなくペ・ドゥナのファンという感じ。僕もですけど。面白いし、本当にチャーミングなんですよ。」

山下「可愛いですよね(笑)。」*1 

このあと、山下監督が『リンダリンダリンダ』を撮り終わって、夢にペ・ドゥナたちが出てきてからというものドキドキして以前のようにペ・ドゥナに接することができなくなってしまうというエピソードが続きます。

映画監督など製作者たちにしか見られない「普段の可愛いペ・ドゥナ」を見たいと思っていたところ、YouTubeに『私の少女』のメイキング映像がありました。

差し入れを配っている様子にペ・ドゥナの人柄がうかがえます。

ペ・ドゥナにお菓子もらいたい(笑)


*1:『ユリイカ2009年10月臨時増刊号 総特集=ペ・ドゥナ 『空気人形』を生きて』対談 是枝裕和 山下敦弘『ペ・ドゥナ、おそるべき女優魂』より(以降、本書を『ユリイカ』と書きます)

2024年9月6日金曜日

お神輿の不思議

多くの人が、若い頃「こっくりさん」をやられたことがあると思います。
あたしは、学生時代にサークルの合宿で初めて体験しました。

手書きの文字盤の上に10円玉を置き、数人が人差し指をその上におきます。
呼び出し方が「得意」な先輩が何人かいてリーダーをやってくれました。
中でもある先輩が上手で、短時間に呼び出すことができました。

あたしが初体験で驚いたのは、10円玉の動き方です。
それまで本などで知っていただけなので、さささっと動くのかな?と想像していたのに実際は、ググっと猛烈に強い力で動きます。
あらがおうと思っていても4人の指は10円玉の上にちょこっと乗っているだけですから、あっという間にもっていかれます。

リーダーが意図的に動かそうとしていたとしても10円玉の表面積が狭く皆と同じような指の乗せ方しかできないので、あのように強い動きはコントロールできません。
ズルっ、ググっと直線的に迷いなく動きます。

そこで本題ですが、お神輿の動きが「こっくりさん」とそっくりだなと思っています。
大人数でかついでいるので個人の思惑では動かすことができず、宮入りだからといってまっすぐお宮に向かわずに、突然あらぬ方向にググっと動く力が働いて人々が引っ張られます。
周囲の見物客も注意していないと突然の流れに巻き込まれガードレールと神輿に身体を挟まれ骨折、救急車なんてこともあります。

あれはいったいどんな現象なのでしょうか?

余談ですが、前述の呼び出し上手の先輩というのは、多くの日本人がよくご存じの有名人です。彼が呼び出していたお相手というのは、彼の背後霊?守護神?のような存在だそうで名前もまるで日本の八百万の神々の一人のような名称でした。(メモしておけばよかった)
そして質問に対する回答が、ユーモアにあふれ、なんともほのぼのしたこっくりさんでした。
彼のその後の大成功には、この存在の加勢があったのかもしれません。

2024年8月30日金曜日

古代への情熱

知人と話していて、彼女がやたらと恐竜に詳しいことを知りました。
セクシャルバイアスと言われればそれまでですが、ごく一般的な主婦がアロサウルスとティラノザウルスの生きていた時代が違うことを知っているというのが面白くて理由を尋ねたところ子供の頃に持っていた恐竜図鑑を暗記するほど繰り返し読んでいたそうです。

さらに聞けば、なにか「失われたもの」に惹かれるそうで宮城県美術館で昨年開催されていた「ポンペイ展」も見たそうです。

そこで久しぶりに思い出したのが、「古代への情熱」。シュリーマン自伝です。
とっくに”自炊”してしまった蔵書を調べてみたら、岩波書店版(村田 数之亮訳)、昭和29年発行の初版でした。

といってもあたしが手に入れたのは神田の古書店だったので手に入れた当初も相当日に焼けていました。あたしがシュリーマンについて知ったのは遅くて高校生の時でした。
SF作家の半村良が『石の血脈』で泉鏡花賞を取ったというので、さっそく読んでみたところプロットに登場して興味をもち原著を読んでみようと手に入れたものです。

今回、上記の知り合いに薦めてみようと手に入れたのは、角川ソフィア文庫版(池内 紀訳)の物で、岩波版に比べると表記も新しく途中の訳者によるコラムと解説も楽しく読めました。
実に30年ぶりに読んだことになります。

ただし、周藤芳幸氏による「文庫版」解説は、シュリーマン自伝の「真実」に関する補足という感じで夢をもちたい人々には興ざめかもしれないと思います。

解説の言っていることは知っておかねばならない事実ですし、どのようなハッピーなエピソードに対しても冷笑的な態度で臨むネット民の嗜好には合うかもしれません。
ちなみに『石の血脈』においてもシュリーマンは盗掘家として扱われていました。

2024年8月20日火曜日

コメントすいません

 コンテンツ整理にかまけていてInspirationについての記事にコメントをいくつかいただいていたのに気が付かずにすいませんでした。ちょっとだけ追記をしました。