出会ったばかりのハン・ヨジンは、ファン・シモクの人と成りを知りませんので、彼の不愛想な態度にとまどいます。
彼女が自分から手を差し出し名前を名乗っているのに無視して用件だけ尋ねたりと無礼極まりないファン・シモクですが、「いきなりなによ」(16')程度の文句を言うだけで、その後も親切に証拠保管室まで案内してあげます。
このハン・ヨジンの鷹揚な感じは、落語で、ちょっと失礼な奴が態度が悪くても「おいおい。困った人だねえ」程度の小言を言う長屋のご隠居さんレベルの懐の深さだと思います。
「懐が深い」感じが出るのはペ・ドゥナが「心のこもった怒り方」の演技ができるからだと思います。
そうした怒り方ができる日本人の美しい女性の役者はなかなかいなくて、みなキンキンした怒り方になってしまいます。(松たか子や二階堂ふみは上手そうです)
ハン・ヨジンの人間の大きさはシーズン2の最終話でファン・シモクが説明してくれます。
殺人事件に検察と警察の収賄が絡んでいることを知ったファン・シモクとハン・ヨジンが車にのって現場に向かいます。彼女を置いて一人で出かけようとする失敬なファン・シモクの車に強引に乗り込んだヨジンは、文句も言わずファン・シモクの荷物を手に取って後部座席に置いてあげるシーンもヨジンの大きな人柄を表していると思いました。
この道中の二人のやりとりが彼らが事件の真相に迫る覚悟を決めた宣言となっています。
ハン・ヨジンは、キム刑事が隠し持っていた証拠品の(被害者の息子の物である)パソコンを手に入れます。彼女がPCを起動すると美少女アニメのキャラクターの背景画像が現れます。
それを見たヨジンが「こはねちゃん!」とつぶやきます。
ヨジンがマンガやアニメが趣味であることを示唆するさりげないシーンです。
ちょっと訛りのある「こはねちゃん」の日本語の可愛さは、『リンダリンダリンダ』のソンちゃんの日本語を知っているファンにはたまらないと思います。
ペ・ドゥナの声は独特のイントネーションがあってそれも可愛さの一つです。
『リンダリンダリンダ』では仲間との話に夢中になるあまり韓国語でまくしたててしまうシーンが何度かあります。おなじみのペ・ドゥナの話し方だと思ってニヤっとしてしまう場面です。
不思議なのは、彼女が話す韓国語と日本語はすごく可愛いのに、ハリウッド作品では、外語が上手なのに(だけに?)ペ・ドゥナらしいキュートなリズムや抑揚が感じられません。
日本語と韓国語は同じタイプの言語なので英語にそれを求めても仕方ないのかもしれませんが・・・。
彼女の英語については、ハリウッド作品について述べる際にもあらためて触れたいと思っています。