2025年9月4日木曜日

ザ・パランマウム

『パーランマウム』は、映画の中ではソンちゃんが仲間に相談もせずに本番で口に出したバンド名ですが、ソンちゃんが「パランマゥムです」と言った時の他のメンバーのなに?それ?、みたいなキョトンとした表情がが傑作です。

下手でも懸命に楽しそうに演奏し歌う姿があまりにも素敵なのでスピンアウトでオリジナルとサウンドトラックと二種類のCDまで出していまして、もちろんあたしは両方とも入手しました。

聞き比べで面白いのは「僕の右手」です。


映画の本編で「僕の右手」がかかるのは、ソンちゃんのカラオケで一人練習と練習風景だけです。

カラオケは出だしだけ、本番前夜の練習風景は途中のシーンなのでサウンドトラックCDでは「別録り」していましてフル尺の歌になっています。

映画とサウンドトラックの両者では、サビのところが歌いきれずに裏声になっています、これが可愛いという人も多いと思います。

オリジナルCDの方の「右手」は歌唱指導を受けたのかソンちゃんが、きっちりとヘッドヴォイスでシャウトしていまして、曲としては、こちらの方が気に入っています。(総合的にはなんといっても可愛い踊り付きの映画版です(上の写真))

一方、練習とサウンドトラックやオリジナルとでも違いがありまして、「くじけないこころ」のメロディーがブルーハーツのオリジナルメロディと異なっています。
もちろん練習風景のメロディは「間違い」と言えばそうなのですが、この「ころ」の真ん中の「こ」を下げて歌うソンちゃんは格別にキュートです。

似た例ですが、映画版では「終わらない歌」でもソンちゃんが勝手にベンドかけている箇所がありまして、

「世の中に冷たくされてぇ~」と「ホントの瞬間はいつもぉ~」の「ぇ~」と「ぉ~」を思い切りベンドしているところでして、ライブの喜びがストレートに伝わってきてとても気に入っています。

「リンダリンダ」のサウンドトラックCDは、前述のようにプレスコで制作されているので残念ながら生徒たちの歓声が入っていません。
映画本編の歌い終わった時の「ソンさぁ~~ん」など声援入りの「リンダリンダ」は格別な味わいがあります。

勢いで、脚本を書かれた向井康介氏によるノベライズ本も買ってしまいました。これによるとソンちゃんは帰国後、漫画家になったような話になっています。
そういえば、『サムデイ』のテヒも漫画家だし、『秘密の森』のハン・ヨジンも漫画好きでした。

ところで、私たちは映画にならって「ソン」とか「ソンちゃん」と日本風の呼び方をしていますが、ノベライズ本によるとソンちゃんの名前はソン・ミヘだそうで、「ミヘちゃん」って呼ぶ方が本来の韓国風なのでしょうね。

2025年9月2日火曜日

リユニオン

20年ぶり”ザ・パーランマウム”の再会!まさかの「リンダ リンダ」の生歌に大号泣!!ペ・ドゥナさん、前田亜季さん、香椎由宇さん、関根史織さん(Base Ball Bear) 、そして山下敦弘監督登壇!さらにパーランマウム渡韓決定!


今年(2025年)は『リンダリンダリンダ』、公開20周年を記念したデジタルリマスター版の公開ということで大いに盛り上がっています。

作品のクライマックスのライブシーンは、ロングショットから正面。
斜め前方、後方。
ソンちゃんの真後ろからとカメラのセッティングの数がとても多いのにも関わらず、本当に通しのライブを撮影したかのようなシーンになっています。

しかも下記の記事の前田亜季のインタビュー(後編)を見ると演奏場面ではプレスコ(*1)で映像をあわせているといっています。
プロの仕事はかくも素晴らしいものだと思いました。

『【『リンダ リンダ リンダ』20年目の同窓会】ペ・ドゥナ、前田亜季、香椎由宇、関根史織が振り返る、私たちの“青春時代”〔前編〕』

【『リンダ リンダ リンダ』20年目の同窓会】「ペ・ドゥナ差し入れの辛ラーメン」「スカート丈まで細かく設定」香椎由宇、前田亜季、関根史織、ペ・ドゥナが語る撮影秘話〔後編〕

ペ・ドゥナの過去のインタビューによるとラストのLIVEシーンは「リハーサルを何度も重ねたので、アドリブはほとんどなかった」そうです。確かにプレスコであればアドリブは無理ですよね。

プロと言えば、リバイバルにちなんだ香椎由宇の最近のインタビューでペ・ドゥナの凄さに触れていますので引用します。

『香椎由宇が語る20年前の自分。「撮影以外もすべてが青春だった『リンダ リンダ リンダ』」』 

彼女(ペ・ドゥナ)は私たち3人よりも少し年上で、普段はスッとして、キリッとしているお姉さんなのに、撮影が始まると、なんだか締まりがない、なんとも言えないぬぼーっとしたような、頼りない佇まいになっているのです。つまり、ボーカル役のソンちゃんがしっかりそこにいる、ということなんですね。

これがモデルの時のキリっとしたペ・ドゥナ、『空気人形』の透明感あふれるのぞみ、思いっきりバカをやれる『威風堂々な…』のウニを演じ分ける実力なのだと思いました。

さらに二つのリンクを設けておきます。
一つ目の記事は、文字だけですが、彼らの雰囲気がとてもよくわかるいいインタビューだと思います。

ペ・ドゥナ「自分にとってどんな作品か? それを話すには1時間必要です(笑)」青春映画の金字塔『リンダリンダリンダ』20周年に4人が再会!作品への溢れる愛を語る | インタビュー 人生、おしゃれ、そしてこれから | mi-mollet(ミモレ) | 明日の私へ、小さな一歩!(1/4)

二つ目は、リバイバル上映にあたって公開されたメイキング映像が掲載されている記事です。

ペ・ドゥナ、香椎由宇、前田亜季、関根史織が再会!『リンダ リンダ リンダ』がいまなお愛される理由は「文化やジェスチャーの差を超えたユーモアがあるから」



*1:「プレスコ(プレスコアリング)」と呼ばれる録音方法で「先に音声(セリフや歌)を収録し、それに合わせて映像を制作する」というプロセスです。

2025年9月1日月曜日

クレープあまいですよ~

会場に駆けつけたびしょ濡れのメンバーにさっとタオルを気遣う男子のカッコよさ。

白状すると、最初この場面で雨に濡れた彼女たちって透けてるかも、と邪な心が芽生えました。
それに引きかえ、なんとピュアな男子生徒たち。

演奏が始まりマイクスタンドを握りしめたソンの力強い横顔を目にしたとたん涙があふれてきました。
そして「リンダリンダ」を歌い終わって振り向いた時の嬉しそうな顔。

ソンの故郷の家族や友人たちは、彼女が経験したこの「輝く時間」を知らない。
思い出話では伝えられないこの時間は、一人で異国にいた留学生だったソンだけの記憶で、ペ・ドゥナが演じる透明な孤独が染み入ります。

おそらく留学経験者は、どこかでソンと同じような経験をしたことがあるのではないでしょうか?
留学生に最初に親切に接してくるのは「国際交流」や「外国人」に興味を持っている人たちですが、半年も経つとそれまで距離があったり不愛想だなと思っていたクラスメートの方にウマが合う連中がいることを知ります。

恵たちも軽音に夢中で留学生に構う時間がないだけでソンを敬遠していたわけではありません。
たまたま勧誘されたソンは、当初「さん」付けで呼ばれていましたが、たった数日で学生生活の「現場」に入って、呼び捨てになり「国際交流」から「国際」の文字が取れます。

普通の友達として受け入れてくれた喜びが「リンダリンダ」の二番で細い右腕を振り上げる様子や、「終わらない歌」の得意そうな笑顔にあふれています。

「クレープあまいですよ~」

暗くなった校内の屋台を紹介するシーンからメンバー紹介(特に自分を紹介する時の照れくさそうな表情)、部室に戻ってきた後の「僕の右手」の練習風景のペ・ドゥナの無邪気に踊る仕草はとろけるように可愛い。

後の大女優を一ヶ月も前橋のホテルで合宿させたなんて、なんて贅沢な作品なのでしょう。