2007年11月3日土曜日

預言者

96年頃。

預言者

「カトリックの間で大ブーム(?)になっている本があるぞ。」と人に言われて手にしたのが、表題のカリール・ジブラン著『預言者 The Prophet 』。
アマゾンが日本で商売をはじめて以来、時折検索してもかかってこなかったので普通の本屋では扱わないマニア本なのだろうと思っていましたが、今日引いたら「ポケット版」ということで昨年出版されたものが手に入るようになったようです。

全編ロマンチックな詩篇になっていて、流れ者の宗教者と町の人々との出会いと別れというお話になっています。
緋文字
※後日談:ナサニエル・ホーソン緋文字 によく似ています。

それはさておきあたしが持っているのは、90年4月23日の版。
装丁、大きさとも可愛くて本というよりも宝物といった風情です。
足利学校でみやげ本として売られている「論語」と同じ大きさなのもグッド。

カトリックといえば、あたしが「至高体験」を経験した教会での話。

そこでファティマの奇跡(1917年に起きた)を記念してモニュメントを立てられました。

ファティマの予言を体験した当時三人の子供のうち、最後の人「シスター・ルチア」が2005年に亡くなったので建立したそうです。

ノストラダムスで
有名な…
さて、ファティマ予言といえば、五島勉の怪しげな本 が有名ですが、五島本が出たときには、「三番目の秘密」は非公開だった上、すでに明らかになっていた先の二つの秘密がことごとく歴史を言い当てていた(みたいな)ので、オカルトマニアは第三の秘密の内容をめぐって怪しげな憶測をめぐらせていたものです。




時はたち、1981年。狙撃事件を契機に教皇ヨハネ・パウロ・二世が、内容を公開したのを受け教皇庁から出版されたのが、『ファティマ第三の秘密-教皇庁発表によるファティマ「第三の秘密」に関する最終公文書 』です。かっこいい!
出版社は、カトリック中央協議会。

今はアマゾンで
買えるみたいです
先の教会の購買部?にお願いすれば手に入るのだろうけれど、本気で信心する気だと思われるのも困るのでアマゾンで探してみました。
ところが、扱っていません。
Googleってみるとクロネコヤマトが通販を扱っていました。でも、非SSLではないか!いまどき。これでは恐ろしくて買えない。

ヤマトの通販へのリンクが設けられているページをよく見ると、とある教会のホームページでした。
場所は潮見とあり、直接そこに行けば買えることが判明しました。

好奇心が勝ち、あたしは単身、カトリック中央協議会まででかけました。
巨大なホールの向こうに中庭のような空間があり、尼さんがしずしずと歩いています。
それにしても、なんで潮見なのだろう?

本は、薄いパンフレット状のもので、さくさくっと読めます。
わかったようなわからないような。これも「預言者」に似て内容もさることながら、所有していることに意味があるグッズ系の書籍です。

そういえば、昔、The Catholic University of Americaという大学の寮に数ヶ月暮らしていたことがあります。
アメリカには珍しいカトリックの大学でワシントンD.C.という場所柄、同地カトリックの総本山だと聞きました。
寮を使わせてもらっていただけで大学そのものとは関係はありませんでしたが週末に本堂で催される教会音楽の演奏会は忘れられません。

(初出:2006年01月28日)

2007年11月1日木曜日

災害カンパ

トトロ事件より前のことです。

Mというアルバイトがいました。隣の職場だし彼が具体的にどのような仕事をしているのかは知りませんでしたが、毎日顔を合わせるので挨拶と軽口程度はかわす仲でした。

ある日のこと、こんな噂を耳にしました。
「なんか。M君、住んでいたアパートが浸水したとこかで住むところなくなっちゃったらしいですよ。」
浸水とは、おだやかではありません。
いったいどのような地域に暮らしていたのでしょうか。

やがて彼は職場に寝泊りするようになりました。
さすがに管理部もまずいと思ったのでしょう住居が定まるまでいったん田舎に帰るように指導したようです。

Mが帰省してすぐ後。

「みなさぁん」職場に響き渡る明るい声。中堅社員のTさんが、大き目の封筒をもって歩き回っています。
みれば封筒に紙がはってあって傍目にはゴルフコンペの投票袋のように見えます。

何事かとたずねますってぇと、「Mが気の毒なので、住宅手当がわりのカンパを募ってるんだ。」とのこと。ひと口いくらとは書いていないが、管理職クラスは結構大きな額を入れていたようです。

お前もどうだ?と言われましたが、なぜかちょっとひっかかるものを感じたので「あ。あぁ。私は後ほど。」とか言ってその場をスルーすることにしました。

職場の事故で犠牲者が出ると会社が公式に育英資金のようなものを募ることがあります。
そんな時には面識のない人であっても、みなが少しずつカンパをする慣習となっているので、その時も別に金を出すのが惜しかったわけではありません。
Tさんてば、やけに朗らかだし、唐突だなぁと思ったのです。

数ヵ月後。
「ちょっと。つかさん。(あたしのことです)」と隣の職場の人間。
「なんですか?」
「つかさん、まさかMの浸水カンパしました?」
「カンパって。えーと。あのぉTさんが集めていた?」
「そうそう。そのT。」
「ちょっとね。なんか気がのらなくて出さなかったんですよ。」
「そりゃ。よかった。」
「え?どうして?」
「あの金ね。かなりの額になったらしいけど、Mには一文もわたってないよ。」

ゲ!……や、やはり。

Tさんの借金癖、踏み倒し歴は、社内の一部では伝説になっています。
あたしがカンパに応じなかったのは友人のKが新入社員時代に100万円踏み倒されているのを知っていたからなのです。(返済をいまだ言い出せないKは、本当に気が弱い)

落ち着き先がきまったMが職場に復帰し、だれかが例のカンパのことをMに聞いたらしいのです。
さだめし「あの金、役にたったかい?」てな具合だったのでしょう。

するとMが「え?なんのことっすか?」と来たのでしょう。

それから、さては!!となったわけですが、そこはそれ社内でも評判のTさんである。責められることもなく、いまだにのうのうと暮らしています。

そんなTさん。やはり、ある平日、子供を職場につれてきました。
会社で大評判の人物でも子供がくれば、そこは子供で父親です。
そしてそんな人ほど、平日、職場に子供つれてきたりするわけだ。これが。

(初出:2005年11月04日)