2011年1月28日金曜日

電子書籍とぼく

まずは、大昔の「マルチメディア時代」の話から。

ヴォイジャーの「エキスパンデッド・ブック」は、HyperCardで開発された米国版のExpandedBookを日本語化したものでした。

HyperCardというのは、Macintoshを買うとはじめから入っているアプリケーションの一つ。
ビル・アトキンスンという天才プログラマが創造したオーサリング・ツールで、現在のアプリでいうとFlashとPowerPointが合体したようなものでしょうか。
プログラミングが可能なパワーポイントみたいな感じ。

KindleやらiPadやらで電子書籍アプリを使うと、動く「絵本」みたいな作品が結構あるでしょ?あんな感じのものやゲーム類が15年前くらいも結構出回ってまして、多くがHyperCardで作られていました。

それまでMS-DOSマシンをいじっていたあたしはHyperCard触りたさにMacintoshに鞍替えして、そして虜になりました。
自分でいろいろ表現できる超便利道具を手に入れてとても幸せでした。

多くのマルチメディアタイトルの中に、フランスの美術歴史学者ダニエル・ギャリックが一人で作った「レオナルド・ダ・ヴィンチ」という作品がありました。
ねちっこいつくりで奥が深い。動く歴史読物、ドキュメンタリーといった内容に感動しました。伝を頼って作者のダニエルにコンタクトしてもらい日本語化の許諾を受け、インフォシティさんに製品化してもらいました。このタイトルは日本でも成功したので、ダニエルにお礼を伝えにフランスに出かけました。

ダニエルは高齢で、その後亡くなってしまったのですが、今でもダニエルと二人でゆっくり歩いた大学の柱廊が思い出されます。

元のHyperCardは外国の製品なので縦書きが無い。ヴォイジャーが日本語版の「エキスパンデッド・ブック」を発売したのですぐにとびつきました。ウェブでの文字表現、デジタルテキストの世界にはまり込んで行きました。

時代が流れ、再びデジタル書籍のブームが来ました。「第二次電子書籍ブーム」ですね。
正月、出版社につとめる先輩に会いました。当然、話題は電子書籍になるわけで、僕はやはし本は紙がいいですよね、なんてフったところ。

「あのね、つかさん。会社でも"紙”の本はこれからも無くならないだろうっていってるよ。でもね。紙の本って今に歌舞伎や狂言みたいな”伝統芸能”的な存在になっちゃうだろう。なんて言っている人がいるんだよ」

ってえことは、将来、紙の本を読んでると人から「いやぁ、さすが!紙の本っすか。渋いっすね。紙の本の方はまったく苦手でね」なんてなんのかなぁ……。

2011年1月24日月曜日

穴八幡

いつも辛気臭いことを書いてますが、今日は一層辛気臭い話です。
自分が老いて行って、本当に死が近づいてくるのを実感するシグナルについて以下列挙します。

1)穴八幡の御札を貼れなくなる

以前、「穴八幡」のことを職場の会議で言ったら誰も知りませんでした。
結構東京の人も多いのに。地方の習慣なんてだんだんすたれて行くのだなぁなんて思いました。

そういえば、東京でも地元の人が少ない西側では、お盆に盆提灯出したり送り火したりとか、まったく目にしませんが、今暮らしている東側では今でも、その時期になると素焼きの皿(焙烙)で燃やしている姿を見かけます。

さて、「穴八幡」は毎年NHKのニュースなどで紹介されますが、冬至に売り出す「一陽来復」御札で有名で、いただいたお札はその年に定められた「方角」に向けて大晦日の24時に部屋の角に糊で貼り付けます。商売繁盛の御札なので、小料理屋さんの厨房の角に張られてたりしますな。

あたしの父方の連中は商売人でもないのにお札を貼る習慣を続けてまして、子供の頃から磁石を使って方角を確認した後、除夜の鐘を聞きながら、椅子に乗って御札を貼る父親の姿を見ていたものです。

さ。ここから辛気臭いっすよ。
オヤジが年取ると、へたってきますな。まず早稲田にある穴八幡神社に出かけるのが億劫になってくる。
せっかく続けている習慣だしってんで、すっかり大人のあたしが代わりに買ってきてあげるわけです。
もっと年とると、高いところに登ってお札を貼りかえるのができなくなってくる。こうなるともうダメで、要するに「穴八幡」の御札を張れなくなったら人生「卒業」だな。と。

で、他に「人生卒業」の兆しって何かな?なんて考えますと。

2)ジャンプができなくなる

ラジオ体操の参加者は、年配の人が多いせいか、先生がこんな指導を話します。
「さ!朝です。こわばった身体をほぐしましょう!まずはその場で軽くジャンプ!――ヒザや腰に心配のある方は肩の上げ下げだけしてください」

観察してますと、年齢が上になるとジャンプできません。
特に同年代ですと、女性が先にできなくなります。(女性が長命なのに、そこの悪化だけは女が先なんですよね~)

3)足のつめを自分で切れなくなる

身体をかがめないので人に手伝ってもらわなければなりませんな。
あたしも両親の足の爪切ってました。(母は存命だって(笑))

以上の三か条を頭に刻みつけて、今後をにらんでまいりたいと思います。
あ~辛気臭い。

2011年1月20日木曜日

耳と感性の話

前回の続き。進歩しないギターについて。

このネタについては書こうかどうか迷ってました。
というのもぜんぜん進歩しないギターのこと書くのもきまり悪いなぁなんてのが先にたっちゃって。ただ、明らかにナニかが違ってきたなと思っているので下手な今こそ記しておいた方がよいかな。なんて。

あたしは昨年の春くらいかな。トモ藤田著『耳と感性でギターが弾ける本』というのを買いました。教本というと大版のムック状の形態が多い中、この本は単行本サイズで読み物風。CDが付いている。
著者の藤田先生は、現職のバークリー音楽大学の助教授で数多くのプロアーティストを養成してきている方だそうです。

この本は、わざと本だけ読んでも学べないし、CDだけ聴いても内容がわからない仕掛けになっていまして、CDに収録されている音源は、演奏だけでなく、すべて著者のトモ藤田先生の「語りかけ」が入っています。

この「話しかけ方」が、男のあたしがいうと妙ですが、すご~く素敵で、学ぶ勇気がわくというか。続ける力を与えてくれるというか。
また演奏が美しくて、ギター一本とメトロノームだけなのに何遍聴いても飽きない。メトロノームが手拍子みたいな感じで自然とノってきます。

指導している練習内容は、捉え方によると非常に退屈だったりするのですが、本の中で「これを僕の教室では最低3ヶ月は続けてもらいます」なんて書いてあるものだから、こっちも素直に三ヶ月以上続けられたりします。他にも練習できなくても焦らない。とか、鼻歌の練習とか普通の教本では絶対登場しないプラクティスが目白押しでして。

途中、ちょっとした量の和音の講義があるのですが、はじめ何を言っているのかまったくわからない。それを律儀に続けていると、先生が伝えたかったことが数ヵ月後にふわっとわかってくる。というか。

そう。あたしが伝えたかったのは、さして上達はしていないのですが、音楽について『気づき』を与えてくれる内容なんですよ。
だからダメな生徒が練習していても音楽が「楽しい」。教本の中でも先生が、「・・・というわけで、これを覚えてやっていくと。”楽しくなります”」なんて言うのですが、言うとおり楽しくなってくるんですね。

最近、「生きたグルーヴでギターが弾ける本」というタイトルも出版されています。

2011年1月18日火曜日

年賀状

礼についてエラソーに書いているくせになんですが、年賀状をやめて早や6年目になります。

先輩で、どうせ来週会うんだし、社内の方々には失礼します。という人がいてあたしも倣うことにしました。
社内でも最近、ちらほらとそんな方々が増えているようです。

で、白状しますと、あたしの場合は社内だけじゃなくて全面的にやめてます(^^;)。

毎年、年末になると年賀状作らなきゃプレッシャにさらされ続けてきて、もうたまらん。みたいな感じになっていたところに郵便局も民営化(2005)したことだし自分もリニューアルしようと決めました。

父親が退職して、そして亡くなって、徐々に、仕舞いには一通も年賀状が来なくなるのをみるにつけ、身もふたもない話ですが、年賀状くらい生きてるうちから早めに対応(笑)しておくか。なんてね。

とはいえ、年賀状をいただくと息災が知れたり、はたまた間接的に知人のご不幸を知ったりと年初独特の引き締め感を味わえますよね。これがメールやfacebookだと、のべつまくなしに近況しゃべりまくってるのでありがたみがないというか、まぁまぁ落ち着けや、はたまたShut Uuuup!なんて気分になる。

さて、さすがに頂戴した年賀状にノーレスは失礼なので、いただいてから作るというこれまた無礼きわまりない賀状を作っています。
ここのところ、前年にあったトピックをリストしたものを送ってます。このブログでも書いたものに毛が生えた程度のものですが。
その中に、「ギターをエレキに変えた。進歩なし」なんて項目があります。

そういえば、いただいた年賀状の中にも何通か「ギターはじめました」とか「バンドはじめました」なんてのがありまして、みんな年とってきて原点回帰?それとも焦ってる?のかな?同じような心境に至るのかもしれませんね。

確かに上達してないのですが、ここのところ実は内面でビミョーな変化を感じています。
それについての続きを次回。

2011年1月16日日曜日

「礼」のこと

論語 」の中で孔子は、人にとってとても重要なことを漢字一語で表して弟子に伝えています。

たとえば、「命」(vision/mission)とか「恕」(empathy)とか。
んで、もっと重要なのでは「仁」(訳語は?)とかね。

どれも、とても大切なんだろうなぁってわかるのですが、これらと並んで「礼」ってのがあるんですね。
前にも書きましたが20章の最終章では、「命」、「礼」、「言」(※)がもっとも大切だと言っている。

でも、「礼」ってたとえば「命」と同じくらいの重みなんだろうか?なんて思ったりしていました。
「礼」って礼儀の礼ではあるのですが、論語で述べている礼ってもっと儀式的な意味の「作法・しきたり」みたいなイメージが強くて、そんなの別に、普通にわきまえていればいいじゃんか、なんて思ったりします。特に若い時はね。

会社で催される各種例年行事や、親戚で集まる法事やら果ては忘年会やらと時間をとられるしきたりって数ありまして、若い時には「ま、オレは出席しなくてもいいや。きっちりやることだけやってれば」なんて思ったりしていました。

それが、年とってきまして(今頃遅いかもしれませんが)、それらがなぜ重要なのかわかってきたような気がします。

「どう重要ってわかってきたのよ?」って聞かれてしまうとむずかしいのですが、世の中っていうか環境っていいますか、それらを成立させているものには、変化の激しいものと、非常に長い年月をかけて変わっていくものがあって、「礼」ってのはその後者のシンボルのようなもので人のコミュニケーションにとって欠かすことのできない媒介物のようなものなのだ。と。

ま、いまさらわかってもね。(笑)
優れた人(君子)は、そんなこと若いうちからとっくにわかっているのでしょうから小人の繰言ということで。


※「言」もそんなに重要かよ?という疑問もあるかと思います。ですが「言」あっての「見えてる世界」なので、これはとてもとても重要です。

2011年1月12日水曜日

デンタルライフ(9)~インプラント~

あたしがN歯科に通うことになったきっかけは、別の歯科医に施してもらったブリッジの処置が悪かったためと書きましたが、数年かけて院長の一番弟子だったT先生に歯茎の手術をしてもらい、最終的にちゃんとしたブリッジに変えてもらいました。

このブリッジは、自分からみて左上部。
ブリッジの片持ちを2本分もうけることはできないため、上側の一番奥の歯がない状態でした。
そして年数が経ちました。

すると、噛み合う相手のいない図の赤字で記した下の一番奥の歯が伸び始めてきてしまったのです。根がしっかりしたまま伸び続けるネズミと違って、こちらは人間ですから、相対する上の奥歯を施工しないと下の奥歯は、仕舞いには抜けてしまいます。

検討した結果、ブリッジが片持ちで作っている奥から二番目の歯。そして抜けたままの最奥歯の2本を、ついにインプラントにすることに決めたのです。

前に書いた通り、T先生に処置してもらっているときに、インプラントにするという選択肢もあったのですが、時期尚早と判断して旧来のテクニックにしてしまいました。今思えば、その段階で実施していればコスト的にもぐっと軽くてすんだのにと後の祭りでした。

インプラントの施工については、かなり一般的になってきていますが、下の歯を伸びなくするための事前処置や別の箇所のエムドゲイン手術(※注)などを並行して行ったため、CTスキャンを撮影した下準備からはじめると実際に「ネジ」を埋める手術まで都合1年以上かかりました。

前日から完全滅菌した部屋を準備して執り行われる様子は、なんだか神事のように厳かな雰囲気でした。助手のCさんも手術着ですので、さながら巫女のよう。

インプラントが無事定着して仕上がったときは、本当に嬉しかった。実に長い年月だったもの。
コスト的にはきつかったですけどね。でも、旅行するわけでもなし、シャカラマみたいにゴルフもやらないし、車もカローラボディのプリウスに十数年乗り続けてるし。歯ぐらい贅沢させてもらってもいいかな~。


※注 エムドゲイン手術とは、スウェーデンで開発された「歯周組織再生誘導材料」ということで、ようするにエムドゲインという薬(幼若ブタの歯胚(歯の種のようなもの)から抽出精製されているらしい)で歯茎を再生させる技術。
このエムドゲインの手術は、外国から来た専門医の先生が行ったのですが、こちらも厳かで迫力ありました。

2011年1月10日月曜日

ベスト(コレジャナイ)SFフィルムズ ベータ版

廊下でばったり、系列会社の役員さんと会いまして。
てったって元同僚なんですけどね。仕事仲間っていうよりは、SF話仲間ってんでしょうか。

年末に、有楽町で一杯やったときに、あたしが実写版「ヤマト」の話をしようとしたら「ちょっと待て!言うな。俺が見てからだ!」と静止されまして。
そんなわけで「見た?」と聞いたところ、

「うむ。もうなんなりとくっちゃべってもらって結構」と来ました。
とはいえ、立ち話ですので、そこはそれでフェードアウトなのですが、そんならここであたしのSF映画~コレジャナイ~ベスト5ベータ版でも書いておくかなと。
(ただし上位独占しちゃうのでエド・ウッドは除く)

1.デビルマン
この作品だけは、エド・ウッドを員数にいれても一位だな。絶対お勧め!公開時に小屋で見たかった。
2.クライシス2050
スターウォーズの特撮を担当したリチャード・エドランドが参加したということで大いに話題になった作品。
内容はすっかり忘れましたが、見終わって呆然と小屋から出てきたのが忘れられない。
3.ブラック・ホール
ディズニー映画です。
後述の「宇宙からのメッセージ」と同時期、すなわち「スターウォーズ」と同じ頃に作られたものとは思えません。
4.スターシップ・トゥルーパーズ
ご存知、ガンダムの原典。ハインライン原作「宇宙の戦士」の映画化か?と思いきや・・・。
古典SFファンなら随喜の涙もの。
5.宇宙からのメッセージ(特に英語版)
主役の志穂美悦子の英語姿が強烈に印象に残っています。

みんな、「キャシャーン」はどうなんだ?とか、「水の旅人」はどうなのよ?とかいろいろ言いたい人がわんさといると思いますが、データベースなしで直感的に今リストアップしたベータ版ですので、そのあたりは、大目にみてください。

そうそう。脱線しますが、昔「13日の金曜日」の第一作目を映画館で見てたんですよ。
そしたら、後方にいる客が映画に野次を飛ばしはじめまして(笑) しまいには、後半、コメディ映画気分になっちまって最高のエンタテイメントでした。

2011年1月8日土曜日

デンタルライフ(8)~代演~

新年早々、またまた歯の話から。

そんなわけで、現在は、落ち着いて定期的にC衛生士さんによる検査を行っている状況ですが、先日の予約日は、Cさんが風邪でお休みでした。

代理のSさんがクリーニングをしてくれましたが、言い草がよい。

「長年一緒に仕事をしているので、休んでいるCさんと声が似てるといわれます。今日は、”声”だけで我慢してください。わっはっは」

敵もとっくに患者の妄想を承知し尽している発言ですな。

さて、代演による定期検査と相成りました。
これまで他の衛生士さんに世話になったことが無いのでちょっと。妙に。変に緊張しました。
いや、緊張というか……Cさんに申し訳ないような罪悪感というか……そう、まるで浮気してるみたいな。

…たかが歯の治療で、ここまでネタが広がるってのは、いったいどうしたものでしょう。
よくも悪くも…われわれはバベルの塔に暮らしてるのですな。