2016年12月31日土曜日

Amy(13) 5 次の再会(2/2)

まったく大みそかにまったくふさわしくない記事です。

フロリンダの講演会がまたあった。大きな会場だった。

キャロルのほかに、ドロシー(Dorothy)とタリナ(Tarina)という二人の弟子がいた。(Amy54)

彼女たちに同行した友人を紹介したら「あんなのが友達なの?」と馬鹿にされた。

フロリンダは、こっそりDorothyを指さして「あいつは自分がカルロスのフィアンセのつもりなのよ。妄想にもほどがあるわ

Tarinaに話しかけようとしたら避けられた。

会場ではDorothyがカメラを持っている男性客にカメラを持ち込むな怒鳴っていた。男性は驚いて、普通に言えばいいのになぜそのように失礼な態度をとれるのかといった。
Dorothyは何も言わずに振り向いて歩み去った。

今回の講演ではフロリンダは、前回のドン・ファンに続き、カルロスもセックスをしているといった。

こちらは本当です(笑)

私はカルロスの著書では、ドン・ファンに禁欲するように言われていると書いてあるのにと思い困惑した。

なぜなら、前回の講演でフロリンダは「カルロスはセックスするのか」という質問に顔を赤らめ「そうでないことを信じます」と言っていたのに。

今回もキャロルを聴衆に女ナワールとして紹介した。彼女は体の中に「The Death Defier」(死への反逆者)という何千年物間呪術師の体の中に住んでいた生き物を住まわせていると言った。

フロリンダは、ドン・ファンは第二の注意力の中、無限に消えてしまった、と言ったので聴衆がざわめいた。

前回の講演会では生きていてセックスをしているといってました。もっとも、それも10年前という想定の話ですが、このあたり口から出まかせのようですから目くじらたてても仕方ないかもしれません。

彼女は、われわれはエネルギーを蓄え彼を自由にし、夢の中で彼を探すといった。聴衆の集合的な意志にも助けてもらいたい、と言った。

これは驚きのニュースだった。

カスタネダの愛読者たちは、ドン・ファンはすでに究極の自由を手に入れたと思っていたからだ。

2016年12月30日金曜日

Amy(12) 5 次の再会(1/2)

二週間ぐらいあとに、タイシャ・エイブラーに変名したアンナマリーがガイア書店で出版記念のプロモーションを行った。


『The Sorceres' Crossing』(『呪術師の飛翔』)


タイシャは、キャロル・ティッグスと一緒だった。

せまい店内は客であふれていた。
タイシャが話した。

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フロリンダ・ドナー、キャロル・ティッグスと自分はいずれもドン・ファンの弟子ですが、各々の特性によって魔女や呪術師の大集団により異なる教育を受けました。
もう私たちにはこの世界での時間が限られているので、これからは私たちが受けたようなやりかたでこれまでのように教えることはできません。

カルロスは、ドン・ファンの呪術師の系譜の最後の一人です。カルロスは一人の弟子もグループも持っていません。

自分たちを棚に上げています。(と下記、Amyも書いています)

みなさんご存知のように呪術師はボランティアも受け入れていません。予兆によると弟子の一人がナワールだというのでカルロスはその人物を罠にかけなければなりません。
(今、一人も弟子はいないと言ったばかりではないか?と思った)

この弟子の中にいるナワールとは、 Tony Lama、本名Marco Antonio Karamという人のことだということが後半わかります。
彼については、補足資料の中にも詳しい情報がありますので、しばらくお待ちください。

それから彼女は「忍びよる者」について話した。

わたしは忍び寄りの技術を使ってさまざまな人間に化けました。男になって仏教の僧侶、リッキーという名前のメキシコ在住の白人、口汚いコソドロ。一番最後の場合は、完全に男にみせるために偽のペニスをつけて女性を誘惑しました。

ローリングストーンズ
「スティッキーフィンガーズ」
誘惑してからディルドを使うのならわかりますが、別に女性はまっ先にペニスそのものに惹かれたりしないのではないでしょうか。

でもミックジャガーのジャケット写真の件もあるし・・・あながちそうでもないのかも。

わたしは、二年間、木の上の小屋で暮らして”サル人間”と呼ばれていました。また美しい女優になって詩人と恋におちたこともあります。(一部省略)

そして乞食のアルフォンシナに化けて、ついに彼女の弱点だった「自己憐憫」を克服することができました。

こうした変身の話が続きますが割愛します。

タイシャはカルロスに負けず劣らず話が上手だった。
彼女は、最後に、”The Selector”というカルロスが言うところの宇宙の秩序を作る力についての話をした。

講演会が終わってからキャロルとタイシャと食事をした。カルロスをナワールと呼んでいるのが気味が悪かった。二人はまるでローマ法王のことを話しているようだった。

罠にはまるような恐れをいだいたが、どこかでカルロスが守ってくれると思っていた。

占星術やエニアグラム、スフィ哲学やグルジェフの話題をした。カルロスは、グルジェフの系統の弟子のClaudio NaranjoとOscar Ichazaと知り合いだった。

セラピストのKathleen Speethは、彼女の著書「グルジェフワーク」の最初のページにカルロスの言葉を引用した。その話をしたらキャロルが「分類している!」と爆発した。

座が白けてしまった。

食事のあと、二人に実家に寄ってもらった。

有名人の写真やサインを飾ってある趣味の悪さをあげつらわれて不愉快になった。彼女たちにそれらを取り除くように言われた。私の臆病さがまさって、取りはずすことにした。

2016年12月29日木曜日

Amy(11) 4 コウモリ

当時、家にコウモリが巣くったので保健所に除去を頼んだことがある。

ちょうどフロリンダが電話をかけてきてカルロスと代わった。

カルロスが悔みを言った「アーヴィングが1年前に亡くなったと聞いて残念だ。そのころTimbuktu(西アフリカのマリ共和国)にいたんだ

Irving Wallace(1916年3月19日 - 1990年6月29日)の命日は先の通りです。その一年後の電話ですから1990年7月頃ということになります。

コウモリ除去をしているといったらカルロスは、重大な軍事機密を話すかのように「コウモリを外に出しなさい」と言った。

私は笑いながら「あなたはカルロス・カスタネダでしょ?あなたが外に出してよ」と言った。

カルロスは、エイミーにコンタクトしようと思っていた、と言った。
君はとても重要な役割を担っているんだ。ほかの連中はぜんぜんダメだ。無能なんだ。連中は、ぼくたちが”捕食者”に食べられていることがわからないんだ」(Amy47)

「捕食者」の概念は、カスタネダ末期に登場する発想です。

カルロスは、夢の中でアーヴィングに会った。娘がトラブルにあっているので助けてやってくれと言われた。またアーヴィングの霊がエイミーの母親が住んでいる家に祟っているといった。

怪しんだが、父のことだったので信じてしまった。
二週間後にロスに行くので家で会う約束をしてしまった。

2016年12月28日水曜日

Amy(10) 3 フロリンダとの再会(3/3)

ガイア書店で催されたフロリンダ・ドナーの講演会がはけました。

(ガイア書店の)外では、魔術的理由でサンフランシスコに今夜滞在するとよくないことが起こるというので空港へ向かうリムジンを待たせてあった。

フロリンダが分かれるときくれた連絡先は私書箱だった。
彼女が、この再会は大変重要だと思っていることがわかった。

父の死以降、ぽっかり穴があいたようになっていたので、最初の小説、”Desire”が成功をおさめていたにもかかわらず、フロリンダとの再会は刺激的だった。(Amy43)


フロリンダの新しい本をすぐに読んだ。
彼女のドン・ファンやカスタネダとのトレーニング、大フロリンダ(Big Florinda)に率いられた一団の女性呪術師たちなどについて書かれていた。
感想と一緒に自分のこの前の著書、”Prodigy”を送った。

さっそく彼女から電話がかかってきた。
次回は、ロスで会おうという話になった。


彼女が、サンフランシスコを発ったとき、宿泊したホテルに荷物を取りに寄ったらロビーにドン・ファンがいたが、挨拶をしなかった、という話をした。

これは幽霊?どういうこと?と尋ねたがはぐらかされてしまった。

ところでアンナマリーとはまだ会ってるの?そうならよろしく伝えて。
そうそう、ガイア書店で来月タイシャ・エイブラーという女性の本が出るって宣伝をみたけど・・。カルロスの序文があるでしょ?

と私が言うと、フロリンダは大笑いした。

アンナ・マリーがタイシャ・エイブラーよ

フロリンダが、キャロル・ティッグスについて話した。
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カルロス、タイシャとフロリンダは、キャロルが去ったときほとんど死にそうだったわ。彼女が消えていくので動揺していたの。キャロルは光るビーコンとして私たちを外の世界へ導くはずだった。彼女を見つけようとしたができなかったわ。夢の中でもできなかった。

悲惨だった。生き抜くために戦ったの。カルロスが最初、キャロルがジョギングをしているのを発見した。追いかけたが見失ってしまったわ。
そして数週間後。ポンっ!
サンタモニカのフェニックス書店で講演をしているとき聴衆の中にいるのを見つけたの。

彼女は完全に記憶がないの!10年間。消えていた。
キャロルが消えたのは1981年。
気づいたらアリゾナでさまよっていた。ビルの高さがやけに高いと感じたって、言っていたわ。

この1981年は、フロリンダがドン・ファンが90歳でセックスをしていたといっている年です。

キャロルはドン・ファンに頼まれた隠し財産を埋めてきたとか言ってたけど・・・でも、これは20年間ものあいだ世の中から隠れていた私たちが公に姿を現してもいいという予兆よ。

上記にさらに10年たしますと1971年から公に姿を現さないでいたことになります。
これでカスタネダは、私たち3人のことを書くことができるわ。
私たちはこの20年間の最大の秘密だったから。だから私もドン・ファンの教えについて書くことができたの。女の道は違うから。タイシャの訓練は私が受けたのとはまったく違うけど。

そしてあなたを見つけた!これも予兆よ。
あなたの小説を読んでわかった。あなたは私と同じ、夢見よ。(Amy44)
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Amyが夢見る人について尋ねると、フロリンダが答えた。
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呪術師には二種類ある。忍び寄るものと夢見るもの。私たち夢見は無のような世界に入っていくの。自我がなくなると流体的になってもはや夢見ているときも起きているときも同じことになるわ。(Amy45)

タイシャは忍びよる者。忍びよる者がエゴをなくすと別の人格になることができるわ。忍びよる者は、”the Theatre of the Real”に住んでいるといわれているの。
カルロスは「忍び寄りは自分をなくすことができる方法」だと言っているわ。
忍びよる者は、日常生活が戦闘場だ、エゴとの戦いはいつまでも終わらないからだ」と。

ドン・ファンがこういったわ
フロリンダ、お前のエゴを大きなけむくじゃらの怠け者の犬だと思え。そいつに裏のポーチに行って寝てろと言え。そいつの周りを歩き回れ。そいつを殺すことはできないからな。エゴは千もの頭を持つヒドラだ。ポーチにいる疲れた年老いた犬の周りを歩き回れ

2016年12月27日火曜日

Amy(9) 3 フロリンダとの再会(2/3)

フロリンダ・ドナーの講演会の続きです。

彼女の二冊目の著書『魔女の夢』はヴェネズエラの伝統的なcrandera(マヤ族から継承した治療技術を継承するメキシコ人女性)に弟子入りしたときの抒情的な逸話集だ。

彼女はドイツ移民の夫婦の間に生まれカラカス(ヴェネズエラの首都)で育った。

他の”魔女”同様、カスタネダと過ごしている間、自分がどこにいたとかはその通りでないことが多く、上記の体験のことも当時はまったく知らなかった。

彼女の話はとても魅力的だった。

この本(Being-In-Dreaming)の出版社Harper & Rowは、この本ではドン・ファンの本当の言葉を載せていない。といって二つの性の違いについての説明をした。(Amy40)

フロリンダもドン・ファンに幻覚性植物をやりたいと懇願したが断られたと言った。
女に力の植物はいらない。もう持っている
女性が子供を産むたびに、自分のエネルギー体に穴があいてしまい自由への道から遠ざかる。だから子供を産むことはおすすめできない、などと当時のフェミニズムに傾倒しているような雰囲気だった。

女性が夢見を行うのは生理の3日前がいい。女性は簡単に夢見で玉ねぎの皮をむくように違う世界に入ることができる。呪術には閉経を避けるテクニックがあるし、生理の周期を自分で調整もできる。
私たちの仲間の一人(後でアンナマリーとわかった)は生理が面倒なので止めてしまった。

客の一人がドン・ファンはセックスをしたのか?と質問した。
フロリンダは赤面し答えた。
事実です。しました。信じてください。彼は90歳だったのですよ」(Amy42)

ドンファンの誕生は、1891年です。90歳だとすると1981年です。フロリンダのこの講演会は、1991年ですから10年前の話をしていることになります。

ドン・ファンの没年は定説では1973年です。
参考までに、ドン・ファンが去ろうとしているとAmyの兄夫婦に語ったのが1976年。そしてカスタネダがAmyに「ラ・ゴルダが去ってしまった」と嘆いたのは1983年です。

フロリンダのドン・ファン性豪説は、どうみても整合性がありません。

フロリンダがキャロルを女ナワールだと紹介した。10年間-無限(Infinity)、または第二の注意力(Second Attention)に身体もなにもかも消えていた。キャロルは当時の時間間隔がまったくなく瞬間のように思っていると述べた。

スウェットスーツでジョギングする姿で奇跡的にまた現れたキャロルは、魔法の扉を開けて私の前に現れた。魔法の扉がキャロルが公に姿を現すことを許してくれた。

私の知り合い~カルロスの信奉者だった~がキャロルに10年の間他の世界で何をしていたのか?と質問した。その時のキャロルの反応はショッキングだった。

部屋の隅に下がって、どもりながら激しく汗をかいていた。人々が彼女を囲んだ。
あ・・・、あぁ。わ、わからないわ・・・わからない・・・

彼女は壁にぶつかるまで下がった。まるで罠にかかったロバのように頭を垂れた。それから人々をかきわけるとフロリンダの横までよろよろしてたどり着いた。

人々は怖くなってこのタイプの質問をさけた。

この本を最後まで読むとわかりますが、これが完全な演技だったことがわかります。

2016年12月26日月曜日

Amy(8) 3 フロリンダとの再会(1/3)

1991年のある晩、新聞を見たらフロリンダ・ドナーがGaia Booksで講演会をやるのを知った。

ガイア書店は、ニューエイジ、フェミニズム関係の書店で、バークリーの我が家から数ブロックのところにあった。

ガイア書店については、先にエントリーとして公開してありますので参照してください。
アメリカの書店には、こうした専門分野に特化した店がありまして、マニアにはたまりません。
あたしもSF専門店によくでいりしていました。

大好きなフロリンダだったのに、会わなくなってもう10年も経っていた。
頭痛がしてたがアスピリンを飲んでいくことにした。この行動がわたしの一生を変えた。

魔法はどこにでもある、だが普通の連中は未知のものをおそれてしまう」とカルロスはよく言っていた。
僕はいつでも列車の先頭に乗る。だから僕がみるものはすべて新しい。他の人々は車掌室に暮らしている

まだドアが開いていない準備中の会場につくとフロリンダを見つけた。小柄な輝くようなフロリンダ。隣に彼女より背の高い女性。曲線美、アーモンドのような眼、ゴマ塩頭。二人はニューエイジのおもちゃで遊び笑っていた。

勇気を出してフロリンダに声をかけた。
昔通りの超活動的だった。5フィート2インチ。100パウンド。
骨細で筋肉質、輝く青い目、1インチにとんがらせたブロンドヘアー。

再会を狂喜した。
なぜこんなに髪を短くしているのか尋ねた。

これは、カルロスの好みだということが後にわかります。

ちょうど、アマゾンのYanamomo族のところからかえってきたばかりなの。虱のため剃らなきゃならなくなったの。

フロリンダ・ドナーの紹介の項目にも登場するYanomamiのことだとおもいますが、Amyの本の表記はミススペリングだと思います。

子分(仲間)を紹介するわ。彼女は、女のナワールよ。(Amy39)

ナワールウーマンとは、女性でカルロスと同じ役割を担う。カルロスと双子の妹のようなもの。そして彼らのリーダーでもある。名前はCarol Tiggsだった。

キャロルは、いきなりでたらめなロック・ソングを歌いだした。「ナワ~~~ル・ウーマン~~~
これ以外は、キャロルは近寄りがたく謎めいていて濃い青い目に暗い影があった。
彼女はあまりしゃべらなかった。フロリンダとま逆。太陽と月。

あまり好きになれなかった。最初のふざけた歌があったにもかかわらず冷たくユーモアがなかった。フロリダやアンナ・マリー(Anny)とは違った。

あなたはアーヴィング・ウォレスのお嬢さん?聞いているわ

カスタネダの本編では、謎の存在だったキャロル・ティッグスが「実在」したことをあたしがわかった瞬間です。

講演中、キャロルの隣に座った。

フロリンダは、最新の著書Being-In-Dreamingの宣伝をおりまぜた。

彼女の最初の著書、Shabonoは、Yanamomoインディアン(スペルについては前述のとおり)との記録だったが、イタリア人著者の作品の盗作といわれて非難されていた。
彼女は、(カルロス同様)自分のフィールドノートを紛失したといっている。
その結果、UCLAの学位が認められることはなかった。

2016年12月25日日曜日

Amy(7) 2 しばらくして(3/3)

カルロスや彼の取り巻きたちとの関係が深まっていきます。

この事件(ラ・ゴルダ消失)のあと、カルロスがいなくなってしまうのではないかと思ったが杞憂だった。
その後もカルロスは両親のパーティに現れた。

その頃、初めてブラインド・デートをした。
彼はわたしがカルロスと知り合いだということを知っていた。彼はカスタネダのインチキを暴こうとわたしに言った。

ブラインド・デートというのは、誰が相手かわからないデートで、ある種の出会い系イベントです。

(その時の相手だった)Dennyは、カルロスがペルーに妊娠したまま残してきた母とその娘(Charo)と知り合いだったのだ。彼らはスイスに住んでいた。

そのことを知ったカルロスは、娘にアメリカでの教育の機会を申し出て、ラスベガスに娘を呼び寄せたが、なぜかすぐに送り返してしまった。(Amy35)

カルロスとの縁で最も重要なのは1980年。私が25歳の時だ。
私は当時、ジャズ・ミュージシャンと結婚していてバークリーに住んでいた。
『Book of Lists』という本を家族と共著で出版した頃だ。


カルロスとフロリンダに呼ばれてサンタモニカで食事した。
いつもどおりカルロスは「セックスレス」な雰囲気だった。

フロリンダは、色っぽいのに、Anny以上に彼と恋人という感じに見えなかった。
フロリンダとAnnyは正反対でフロリンダ活動的、アニーはおしとやかだった。

カルロスに言わせると二人は相補的でお互いが「小暴君」(petty tyrants)として存在しているそうで、二人はまったく気が合わず喧嘩ばかりしていた。(Amy35)

『Book of Lists』の話になった。その中に私が興味をもっていた「人間の自然発火現象(Who Have Spontaneously Combusted)」の項目があった。

カルロスが、「自然発火をどうしたら起こせるか知ってるかい?」と聞いた。
あたしがもちろん知るわけがない。

先週、ふろに浸かっていたら僕の左足が燃え始めたんだ

フロリンダがテーブルの下でカルロスの足を蹴ったのがわかった。

いきなりカルロスが話題を変え、フリオ・イグレシアスの家を訪れたときの下品な話をしだした。

このとき、あたしはカルロスのグループメンバーの面接試験に落第したことを悟った。

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15年後。カルロスの腕の中でこのときのことをたずねたら(私が落第したというのは)本当だった。(Amy40歳。カルロス69歳です!)

わたしが落ちた理由を尋ねた。
君はあの時、世の中に”税金”を払うのに忙しかったからさ

きみは結婚していたし、バークレーに邸宅を持っていたし、友達も多かった。それらを手放すことはできなかった。加えて、きみのお父さんがまだ存命だった。君にそれらを捨てさせることはできなかった。きみを自由に、鎖の環を切れなかった

1989年までに離婚が成立した。中国の瞑想と武術に夢中だった。
83歳の老師に気功(chi kung)をサンフランシスコで習っていた。
カルロスにぜひ老師に会うべきだと手紙を出した。この手紙で交際が深まった。

新たな人生のパートナーを探していた。
父はがんに侵されていたが医者にかかろうとしなかった。わたしもホルモンのバランスがくずれ薬を飲んでいた。

そんな中、父が亡くなる1年前、本当の魔術の冒険が始まろうとしていた。

2016年12月24日土曜日

Amy(6) 2 しばらくして(2/3)

カスタネダとの再会に至る話の続きです。

1976年、兄夫婦(David and Flora)はカルロスとロサンゼルス図書館の資金援助の会で遭遇した。カルロスはいきなりドン・ファンがこの世界から去るために燃える準備をしていると話しだした。

このエピソードについては、すでに各所で触れていますが、一般にドン・ファンが73年に去ったといわれている時期とかなりずれています。

カルロスは絶望的になっていて他の本物の先生を求めているがみんな偽物だと言っていた。(Amy30) 

このパートについては以前の投稿で言及しました。いろいろな例をあげて面白おかしく紹介しています。

ドン・ファンから免許皆伝をもらっているような人物が今更、先生を探すでしょうか?
Amyも同様のことを述べています。

カルロスは、エイミーの父が亡くなった後も、よく父の声音をまねて思い出を語った。

このエピソードからもカルロスとWallce一家とのつき合いの深さと長さがわかります。

強烈な思い出がある。1983年。実家にいたらカルロスから電話がかかってきた。
ラ・ゴルダが去ってしまった。彼女は魔女の中でもっとも強力なメンバーだったのに。彼女は去った。僕の目の前で消えてしまったんだ。彼女は自己中心的な性質が原因で死んだんだ。彼女は僕には、ナワールの資格がなくダメなので、彼女がナワールでリーダーだと決めたんだ。もう、僕はひとりぼっちだ。ドン・ファンに後を任されたのに約束を果たせない」(Amy33)

ラ・ゴルダがはじめて登場するのは、ご承知のように『力の第二の環』からです。
『力の第二の環』は、1977年の出版。この電話事件があった1983年は、1987年出版の『沈黙の力』よりも後の出来事なので整合性はとれています。

わたしは、そのころ、I Ching(易経), the Tao de Ching(老子道徳教), Zen(禅)、仏教の経典、スフィ哲学などの東洋哲学に惹かれていた。

あたしがアメリカで太極拳を習っていたことは以前、記しました。そのクラスでも休憩時間に老子の朗読をしていました。当時は、西洋人たちはこうした東洋哲学に夢中だったんですね。

あたしが米国をさるとき、仲良しだったT. S.は、C.G.ユングの序文がある英語版「易経」をプレゼントしてくれました。のちに、このテキストを利用して作った易占の(稚拙な)プログラム(今でいうアプリですな)がコンテストに入賞したことがあります。

私は、そのどの分野でも指導者たちはとりみだしたりしないことを知っていた。
また、カルロスの本でもドン・ファンが息子の死に際し、見ることにより悲劇を乗り越えたことを読んでいた。わたしはそのような能力にあこがれていた。(Amy33)

カルロスは、そんなドン・ファンの弟子の呪術師なのにとりみだしたりするのは変だと思ったが、カルロスが紹介した世界の方が仏教などの世界に比べてはるかにエキサイティングだった。(Amy34)

2016年12月23日金曜日

『ビギニング・ブルース・ハープ』(ドン・ベイカー著)

ちょっと投稿の順番が変わったので、(Amy Wallaceの連載の間に)一回ハーモニカの話題をはさみます。

『ビギニング・ブルース・ハープ(CD付)』というブルース・ハープの教則本の紹介です。
著者は、ドン ベイカー(Don Baker)というハープの名手です。

2012年5月28日に購入しまして、それからコツコツと進めて2013年5月に”一応”独習で終了しました。

ハープを始めたのは2009年ですから、3年近く経ってからの学習ということになります。(その間に先生にも習い始めています)

本のサイズも小さくて練習曲の分量もちょうどよくバランスがとれている、非常に優れた教本です。いや、最高の教本じゃあないかしら。

一曲毎に、最低20回。暗譜ができた段階で、先生が生徒(どちらも自分なので甘いですが)に○をつける形で一応全曲やってみました。

たとえば、『ブルース・フォー・ジョー』という卒業?楽曲がありますが、これはまぁ、それっぽくできることはできるのですが、今でも実はベイカーさんのようには到底できません。(今後もできないと思います)
とても難曲ですが、これが少しでもマシにできるようになったら本当に腕前(口前)が上がったと言えるのではないでしょうか?

書き込みやらでボロボロになりテープ補修してまで使い込みました。
とにかくベンドの習得に特化しているのでシンプルかつ段階的に学ぶことができます。

みんなの悩みの種の3番ベンド専用の曲なんてのもあって秀逸です。

あたしは下手なりにも一応ドローベンドができるようになってから「ベンド力定着&強化」のために購入したので本当の初心者よりはモチベーション維持が楽だったかもしれません。

難点でいいますと、記譜されている楽譜、特に穴番号には間違いが多いので参考にせず、自分の耳だけで探って直接耳コピーした方が良いと思います。

7番~10番ベンドが弱いのでそれらを訓練する同じような教本があるとよいなと思います。
(それとオーバーベンド系?・・・誰も買わないか(笑))

2016年12月22日木曜日

Amy(5) 2 しばらくして(1/3)

「概要」の話題を少し追記したくなりまして。間に一本記事を入れました。
投稿の順番を見やすくするために公開日時を移動しました。

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最初の頃のチャプターは、出だしで気合が入っていることや重要な情報が多かったので、割合”抄訳”っぽい感じの元原稿になっています。

もったいないので、それらは生起こしのまま掲載し、ここから後しばらくは、『ドン・カルロスの教え』同様、あたしの私見や推測・想像・注釈などを青で入れます。

みため安っぽい昔のホームページのようですが、いま揉めている、「まとめサイト」のように、こじゃれたなサイトよりもこんなヘタレなサイトの方が実は信用できるってんでしょうか。

また、登場人物の名前がアルファベットだったりカタカナだったりしますが、日本人の間でもうなじみになっている人々についてはカタカナにしている場合が多いです。(地名も多くはアルファベットにしてあります)

では、第二章始めます。

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(カスタネダに)はじめて会ってから再会まで19年たった。(1972年+19年=1991年。Amy、36歳。)

91年と93年の期間、Amy(とその家族)は、手紙などのやりとりで不定期に会っていた。
カルロスと連絡をとる方法は(住所も連絡先も秘密にしていたので)、Nedかカルロスの会計士、Jeryy Wardに手紙を預けることだった。連絡がつかないことも多かった。

カルロスが両親の家や兄のサンタモニカのDavidの家に立ち寄ることもあった。(Amy26)

わたしがカルロスに会うときはたいていAnny(Anna-Marie/Taisha Abelar Carter)を連れていた。また、例のフェデリコ・フェリーニの恋人の時もあった。彼女はもうジーナ(Gena)とは呼ばれていなかった。(Florinda Donnerになっていました)(Amy27)

数多くの有名人や文化人がファンだった中で、この一家にだけ特別な付き合いをしていたのはなぜなのでしょうか?

 Irving Wallaceが大統領に招かれるくらい著名な作家だったということもあるかもしれませんが、カルロスはもっともっと有名な連中との接点があったわけです。17歳のAmyにハナから狙いを定めていたのでしょうか?

でも、それならなぜ年の近いTaisha Abelarを伴って行ったのでしょうか?
カルロスの口説き術は謎めいています。やはり呪術師だからですね。

カルロスは、両親が主催した出版社のガラ・パーティにもフロリンダを伴って現れた。
父は、Annyもフロリンダもカルロスの恋人のように思えない・・でもそのようにも見えるしと言っていた。
カルロスはあまりセックスに興味がないようにも思えた。

芝居が上手です。

彼はよく女がこの世界を支配しているのだと言っていた。(Amy29)

2016年12月21日水曜日

Amy(4)1 世界で最もとらえどころのない男(2/2)

カスタネダのプロファイルの続きです。

1968年に『ドン・ファンの教え』がSimon and Schuster社から出版されたとき、UCLAの文化人類学部では、カルロスのフィールドノートを確かめずに学位を与えたということでスキャンダルになりました。
この件についてカルロスはノートを無くしたと主張しています。(Amy6)

また、呪術修行の様子を記した唯一の第二稿を映画館に忘れて無くしてしまったとも言っています。

本を読んだ世界中のファンがソノラ砂漠にカルロスやドン・ファンをはじめとするヤキ・インディアンを求めて訪れましたが誰ひとり成功しませんでした。

第二巻目の『分離したリアリティ』は1971年の出版。
カルロスのあまりの間抜けっぷりに、Adam Blockというジャーナリストは、ドン・ファンは俺を弟子に選んでくれればよかったのにと思ったそうです。(Amy7)

また呪術師のドン・ファン・マトゥス(Don Juan Matus)という名前は、おそらくカルロスが結婚したときに飲んでいたワイン(Mateus wine)から考えたのだろう、とMargaret Castanedaは言っています。(Amy6)

上記の内容から、Amyは、Margaretの本を参考にしていることがわかります。

その他にもジョン・レノンがオノ・ヨーコのことを私のドン・ファンと呼んだ(Amy8)というエピソードや各種メディアのインタビューに関する記載がありますが、割愛します。
前述のように、あたしたちのイメージとは裏腹に普通の(でも謎めいた)著名人としてカルロスはハリウッドの社交界にデビューしていました。

ショーン・コネリー、スティーブ・マックイーン、クリント・イーストウッドのようなエピキュリアン的生活を見て、あのような生活をしていたらガンになる。僕は絶対にガンなんかでは死なないよ!とAmyに言っていたそうです。

巨匠フェデリコ・フェリーニも彼に映画化を持ち掛けていました。フェリーニの恋人、Ginaの愛称で呼ばれていたRegine Thalにそのころ出会います。ドイツ系のベネズエラ人。後にカスタネダのコミュニティに仲間入りし、あのFlorinda Donnerになります。(Amy18)

さて、パーティーから帰って来たAmyの父親がこんなに興奮しているのはオーヴァルオフィスでケネディ大統領と会った時以来のことだったそうです。(Amy21)

両親はパーティで出会ったカルロスの連れ(恋人かどうかはさだかではなかった)のAnna-Marie Carterにも魅了されていました。

「何か不思議なことが起きているようだった」とIrvingが言っていました。
Anna-Marieは当時UCLAの大学院で文化人類学を学んでいた学生です。(Amy21)

このAnna-Marieが、後のTaisha Abelarです

妻(のMyra)はファンでしたが(エージェントだった)Ned Brownは、カルロスの本はナンセンスだと思っていたので読んだこともなかったそうです。

カルロスは、担当の編集者のMichael Kordaとの方が知的な交友関係があって、Kordaがいつも「本当は、でっちあげたんだろ?」と聞くので困っているとAmyにこぼしていたそうで、その質問は、いつも笑い飛ばしていたそうです。

父親の計らいでNedに頼んでカスタネダと家族で食事をする機会を設けてもらいます。
彼女は、こんなに緊張したことはないと書いています。

場所はNedの家。彼女の兄のDavidと妻のFloraも同行しました。彼の姿が普通のスーツとタイという姿で拍子抜けしたそうです。

もっと変な恰好(ターバン?羽飾り?)をしている人だと思い込んだいたとあります。
Anna-Marie(Taisha Abelar)もつれてきたそうで、興奮しすぎて、その夜の会話はまったく覚えていないそうです。(Amy22~23)
Anna-Marieはカルロスに負けないくらい魅力があったとあります。

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わかれぎわカルロスが手を握ってわたしの目を見ていった「われわれはまたお会いするでしょう」数日後、署名してある『分離したリアリティ』が届いた。
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本の中表紙に書かれた署名とメッセージの挿絵があります。(Amy24)

この文章(が下手なの)を見て、カルロスは違うと言い張っていますが、カルロスの本はプロのライターに手伝ってもらっているのではないかと思ったそうです。

数年後、出版社のSimon and Schusteにいた知り合いが確かにライターがいたと教えてくれた、とあります。

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一週間後にカルロスの夢をみた。カルロスの後ろには魔女のひとりがいた。
カルロスは、われわれは再会するだろうといった。
この夢を生涯忘れたことはない。(Amy25)
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2016年12月20日火曜日

Amy(3)1 世界で最もとらえどころのない男(1/2)

いよいよ始まりです。

この章は、カルロス・カスタネダの略歴とAmyとのなれそめなどが紹介されています。

Amyがはじめてカルロスに会ったのは17歳の時(1972年)です。

まず、彼女の父親のIrvingがハリウッドで催されたパーティでカスタネダに会い、そのことを家族に興奮して報告します。

ニューエイジオタクだったAmyの希望もあり、当時、カスタネダのエージェントだったNed and Myra Brownを通じて本人につなげてもらいます。(Amy3)

この章のカスタネダの紹介では、彼の名前を「Carlos Cesar Salvador Aranha Castaneda」としています(Amy3)。たしかに本人はAranhaを名乗っていたようですが、苗字は、Arana が正解です。(pending Margaret)

以下のAmyと出会うまでの履歴については、彼女自身ではなく、Margaret Castanedaの著書や他の文献を参照して書かれたものだと思います。(pending)

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彼は、1925年12月25日ペルーのカハマルカ(Peru,Cajamarca)の小さな町の中流の宝石商の家に生まれた。
履歴を消すため、ブラジル生まれとかアルゼンチンとかメキシコ生まれと偽った。
25歳のとき母が亡くなり三日間部屋から出てこなかった、そして二度と家に戻ってこなかった。
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ドン・カルロス”では24歳となっていて、他の文書からも、おそらく24歳が正解のようです。

次に、ペルーには妊娠中の婚約者がいたが現地に置き去りにした(Amy3)という一文があります。この女性が生んだ子供は女の子で、その子供について『力の第二の環』でラ・ゴルダから指摘されます。(って自分でラ・ゴルダのセリフを書いているだけだけど)

ペルーで学んだ後、1951年9月23日にサンフランシスコに船で渡米しますが、母が子供の時(6歳 Amy13)に死んだとか祖父母のキャラクター含め偽の家族の履歴を作ります。

1955年ロサンゼルスのコミュニティカレッジに入り(Amy4)、ここで妻となるMargaret Runyonと出会い、1960年に結婚します。



カルロスは「精管結紮手術(せいかんけっさつしゅじゅつ)」(vasectomy)、つまりパイプカットをしていたので友人にマーガレットとの子供を作ることを頼みました。そして誕生したのがC.J.カスタネダです。(Amy4)

パイプカットの件は、ここがいまのところ一次情報です(pending)。

1959年、文化人類学者になる夢をかなえるためUCLAに入学。メキシコのシャーマンに会いに行くようになります。これがドン・ファンですな。

2016年12月19日月曜日

Amy(2) 『呪術師の弟子:カルロス・カスタネダとの人生』 (概要 2/2)

「概要」の話題を少し追記したくなりまして。
投稿の順番を見やすくするために公開日時を移動しました。

この本には、性的な描写や話題、そして用語が非常に多いです。
個別の投稿の頭に記すようにしますが、中にはかなり露骨な表現もあるのでご留意ください。

また日本語化にあたっては性行為(f-word)や女性生殖器(c-word)(英語とスペイン語)を表す言葉の選択に迷いましたが、あたしの翻訳では、あっさりと済ませてあります。

あちらでは日常的にでてくる罵り用語だったりするので、無理に該当する日本語にするよりもニュアンスとしては自然になっているハズです。

医療・生物用語的な男女生殖器の名称については、原文でそのように書いてあればペニス、ヴァジャイナにしてあります。後者は日本語ではヴァギナと称するのが一般的ですが、ここでは英語発音をカタカナにしました。

例のBBCの番組のインタビューでもAmy Wallaceが、カルロスとのエピソードの中で、そのような単語を口にしています。

本編では、カスタネダの会話の中に多用されるスペイン語の単語帳がついていまして「性関連用語」、「侮蔑・罵り用語」というジャンルが紹介されていることでもいかに多様しているかがわかります。

余談ですが、映画『ビッグ・リボウスキ』では、本編に登場した「f-word」のシーンだけをつまんだ動画がYoutubeにアップされています。このf-wordを仮に日本語にしたとすると会話としては非常に不自然なものになってしまいます。それほど英語の性関連罵倒用語と日本語の用法が異なるということですね。末尾に、埋め込んでおきます。

この本は、カスタネダのハーレムに属する女性の生活が中心となっている内容なのでアメリカの女性たちの性にたいする(当時の?)意識がよくわかります。
また、あたしのような凡庸な男からみると、ここにいる女性たちがみなかなり好色のように思えます。

彼女たちが別に好色なのではなくて、実は女性一般の考え方ならば、そうならそうと早く言ってくれればいいのにとゲスなことを考えてしまいました。

著者のAmyも後半、「わたしの書いたハーレムの性生活の様子は、いろんな受け取り方をされると思う。中にはうらやむ人もいるのではないだろうか」と書いています。

2016年12月18日日曜日

Amy(1) 『呪術師の弟子:カルロス・カスタネダとの人生』 (概要 1/2)

ついに、あたしの「カスタネダの旅」の真打?といってもいい文献『呪術師の弟子:カルロス・カスタネダとの人生』 (Sorcerer's Apprentice: My Life with Carlos Castaneda)をご紹介する時がきました。

本編のおさらいが全部済んでからの方がいいかとも思ったのですが、後期作品群が、ご案内のように結構かったるいので、ここでキリっとAmyの方がいいかなという流れです。

さて、著者のAmy Wallace(1955年7月3日~2013年8月10日)は、米国の著名なベストセラー作家、Irving Wallaceの娘です。

ウィキペディア(米語版)によると、

Irving Wallace (1916年3月19日~1990年6月29日)は、アメリカのベストセラー作家・脚本家である。Wallaceは、緻密な調査に基づいた作風、特にセックスをテーマにした作品で知られている。
ある評論家[誰?]は、彼のことを”あらゆる三文小説の書き手の中で最も成功した人物である。というのも彼がそのジャンルを卑下することなく真剣に提唱したからである”と述べている。Wallaceは、ブルーカラーのための作品を書いたブルーカラー作家である。評論家の多くは彼の起伏のない文章と個性のない登場人物たちについて批判的である」(訳:あたし)

と、皮肉っぽい書きっぷりが気の毒ですが、とにかくベストセラー作家ですので当時のアメリカでは、誰もが知っている著名人だったようです。

Amy Wallaceは兄と妹の二人兄妹で、本人も作家として、そこそこ成功した作家でした。
「そこそこ」なのは、彼女に関するエントリーが日本語版ウィキにはないことでも知れます。

近年(2002年)にカスタネダと恋人であったことを公表し、2003年に出版された本が、この『Sorcerer's Apprentice: My Life with Carlos Castaneda』です。

カスタネダの「恋人」と書きましたが、正確にいうと「恋人集団の中のちょっとだけ特別な一人」、カスタネダの死期が迫ったころには「愛人集団の中のちょっとだけ特別な一人」となります。

今回、あたしが購入したのは、改訂版の2007年のものです。再版されてますので、あちらでは商業的には成功したと言えるのではないでしょうか?

日本では、カスタネダ自身の知名度が低いので、米国と同時に出版されていたとしても売れなかったと思います。

彼女は、2013年、心臓病で58歳の若さで亡くなられています。
本文を読むとわかりますが、若い自分にけっこう身体を酷使して薬漬けになってますしストレスも相当だったのではないかと思います。
ありし頃の姿は、例のBBCの番組映像でご覧ください。

この本は、ニューエイジのグル、カルロス・カスタネダの正体を暴いた本でもありますが、カルト宗教の体験記としても貴重なものです。

あたしたちが本当に知りたいのは「ドン・ファン」の姿や真の教えなのですが、残念ながら、それらの情報はありません。
作家として成功した後の、カスタネダと弟子たちの悲惨な物語です。

この本は、全部で47章の本文とエピローグ、そして「2007年度版に寄せて」と「付録」という構成になっています。

「2007年度版に寄せて」は重要な情報なので全訳を紹介します。
また、付録は、以下のものがあっていずれも貴重な内容なので、付録AとBも全訳を紹介する予定です。

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◎付録A 主要な登場人物紹介
(A Guide to the Cast of Major Characters)
◎付録B 彼らはいまどこに?
(Where Are They Now?)
◎付録C カルロス・カスタネダの遺言と死亡証明書
(Carlos Castaneda's Will and Death Certificate)
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2016年12月17日土曜日

スナフキンのハーモニカ

先日、ムーミンのお店で(っていっても人間がやってる店です)ムーミンのスマホカバーを買ったところ銀座松屋でやっているムーミンの展覧会「ムーミン絵本の世界展」の招待券をくれました。

(実は、ムーミンのスマホカバー、これで三つ持っています)

展覧会はさておき、必ずグッズショップがあるだろうとふんだあたしは、満を持して出向きましたが、そのかいがありました。

なんと、スナフキンのハーモニカを売っていたのです。(写真)

しかも。製造元を見たら、鈴木楽器ですよ。
こりゃおもちゃじゃないぞと即購入しました・・・二個。
一個は吹くため。もう一個は保存用。

配列は、10ホールズと同じ、6番穴の吸いがラで7番穴の吸いがシになってます。
おあつらえ向きじゃあないですか。

サイズ比較ができる写真を撮ればよかったのですが、ハーモニカの長さは、4センチ5ミリ。小さいです。(穴の数は4つ。ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド)

Hohner Little Lady
ホーナーのリトル・レディ(長さ3.5センチ)よりは少し大きい感じです。リトル・レディも音数は、スナフキンと同じです。

小型のハーモニカでは、他にザイデル社の6つ穴のBig 6がありまして、こちらは普通の10ホールズを短くした感じです。すんずまりになった10ホールズ。

キーホルダーだから小さいのかもしれませんが、はじめスズキのハープマスターをベースに普通の大きさのものを作ってくれればよかったのにと思いました。

でもね。よくよく調べてみると、ムーミンの登場人物たちというか生き物たちの身長は非常に小さくて30センチくらいなのだそうです。(原典での裏取りはしていません。あしからず)

すると、通常の10ホールズは長さが10センチ。展覧会で売られているスナフキンのハーモニカは、その2分の1弱ですから。
おー!!これは本物のスナフキンのハーモニカじゃあないですか。
スズキやるなぁ。

ちなみに、今日、演奏してみましたが、右端の4穴の吹き吸い(ド・シ)が少し固めでした。
試し吹きをした曲は、アニー・ローリー、アメージンググレース、キス・ザ・ブラーニー・ストーンです。

キス・ザ・ブラーニー・ストーンは、10ホールズ独特のラ・シ・ドのあたりで吹き吸いが入れ替わる配列に慣れるのに最適な曲でして、チャーリー・マッコイの教本にも出ている軽快なアイリッシュです。
谷の仲間とのパーティでは、受けるかもです。

2016年12月16日金曜日

冷え防止と片足立ちとダイエット(3/3)

さて、次はダイエットです。

昨年(2015年)の3月に鼠径部ヘルニアの手術をしました。ヘルニアが発症した原因は、あたしの推測ですが、その前年の8月から進めていたダイエットというかシェイプアップにあると思っています。
Highclere Castle.jpg
ダイエットに関してはあたしは妙な自信を持ってまして、痩せようと思うときっちりある程度目標までもっていけていました。今回も、職場の異動の関係で食生活が変化したためかなり太ってしまい、一念発起したのです。

新しい職場は、まるでダウントンアビー(笑)のような食べ道楽だったら大喜びの職場だったのです。あいにくあたしは食については執着があまりないので、ブランソンのような孤立感を感じていました。

その際のダイエットの方法については詳細を割愛しますが、炭水化物を半減する。間食を一切しない。腹筋をする。
この三つです。

そして、この腹筋がヘルニアの原因だと思っているのです。

さて、手術をした後、体力が十分に戻る前に酒席に出た挙句、大風邪をひき、生まれてはじめて風邪で会社を一週間休んでしまったのです。
この寝込みのせいで、ダイエットで減っていた体重がさらに減り、ズボンのベルトがゆるゆるになってしまいました。

そこでベルトの穴二つ分。約5センチくらいを切って縮めました。

ま、そんな経過の反省で、ダイエットも考え物だなと思い。「白米」も普通に食べ、おやつも量は減ったものの勧められれば食べ、むしろ少し体重を増やそうと思いました。

そんなこんなで一年経ち、2016年の秋くらいに穴二つ分縮めたベルトが、少しきつくなって戻って穴一つ分くらいになってきました。あえて太ろうと思っていたのでよかったわけです。

そんな体重・体形状態の中、前述の片足立ち体操をやりつづけていた日常。

ふと気づいたら、またベルトが穴二つ分くらいに痩せていることに気が付いたのです。

む?まてよ、と思ってGoogleで、「片足立ち ダイエット」と引いてみたところ、なんと「片足立ちダイエット」という用語があるではないですか。

あたしは、冷え対策のつもりでやっていたのが、知らない間にダイエットも一緒にやっていたということを知ったのです。

非常に得した気分です。

そうそう、肝心の冷えですが、まだ冷えますが、確かに少し改善しましたので、片足立ちはこのまま継続していこうと思います。

2016年12月15日木曜日

冷え防止と片足立ちとダイエット(2/3)

片足でしばらく立っていると、どのような状態のときに「ふらつくのか」、どうすれば、ふらつかずに立っていられるかというのがわかりました。

ふらつくのとそうならないのは、当たり前ですが表裏です。
今朝、テレビで医者が「腸を健康に保つには、腸を元気にすることです」と言っていました。

意識を覚醒させて、一点をきちんと見つめるとふらつかない。あたしの場合は、歯磨き中ですから、例えば立ててある歯磨き粉のチューブの先端とか蛇口の先端などをじっと見つめます。

追記)それと、きちんとした呼吸を意識するといいようです。

逆に、そうした意識の集中がとぎれてふっと考え事をしたり、もっとわるいのは完全にぼうっとしているといきなりグラっときます。

あたしは、前述のカドペーサーの時に、歯磨きの方向を変えるのですが、その際、意識と動作に変化がおきるのでグラっとなりやすいです。

あたしのように、ついでにやるのでない場合や電動歯ブラシを持ってない方は、タイマーアプリを活用するといいと思います。

iOSですと「IntervalTimer」という素晴らしいアプリがあります。(有料ですが価値があると思います)普通の歯ブラシを使っている方もこのアプリを使うと歯磨きが上達するはずです。
コマーシャルの15秒であれだけ表現できるのを見ても二分間という時間がいかに長いか実感できます。

記載のように、あたしは通常の電動歯ブラシに加えて、プリニア(ドルツ(パナソニック)のOEM)にタフトブラシをつけてさらに二分間磨いています。

そこで最近は、片足立ちを二分間に延長。都合、四分間するようにしています。

2016年12月14日水曜日

冷え防止と片足立ちとダイエット(1/3)

閑話休題。

辛気臭い話ですが、非常に役に立ちそうな話をひとつ。

数年前に、リヨン(仏)に仕事で行ったとき、いきなり冷え性になりました。特に足首の表側ってんですか。足の甲側の足首です。

会議室がめちゃくちゃ寒くて。
ウェブ関連の会議ですからおおむね全員、ノートパソコンを持って会議室にいますが、あたしは自前のThinkPad(レノボじゃないやつ)を暖房代わりに足首の上に乗せてました。

リヨンってのは学術都市だそうで、世界遺産のある街並みの他にちょっとだけ郊外に出ますと筑波学園都市にそっくりな味気ない寒々とした風景がありまして、だから寒かったのか?

発症した冷え性はその後、進行しまして、昨今はふくらはぎのあたりもジンジン冷えてきてます。いろいろ寒さ対策のスパッツやらレッグウォーマーやらを買っているのを見た家人が、それは筋肉が落ちているからだと指摘。

ついては試しに、片足立ちをやってみろと言われました。
ちょうどテレビでそんな健康番組を見たところだったようです。

片足づつ一分間です。そうすると足首やらふくらはぎに筋肉がついて冷えが少し解消するらしいと。

ま、簡単なので励行するようにしました。

いつやるかといいますと、前にも書いていますが、日常に習慣をつけるのは意外と大変でたとえ1分(両足で2分)でもなかなか身につかないものです。
そのことを実感しているあたしは、一計を案じました。

歯磨きを片足でやるのです。

電気歯ブラシは、クアドペイサーという機能がありまして、30秒ごとにピっと鳴って利用者が上下や左右など方向を変える目安にして満遍なく磨く習慣がつくようになっています。

余談ですが、クアドペイサー(日本語ではカドペーサー)は、ソニッケアの造語だと思われます。スペルは、quadpacer。quadで4分の1。pacerは、ペースを配分する、ってことです。
この機能は、最近ではソニッケア以外の電動歯ブラシにも搭載されています。

歯ブラシは、一回2分ですから、ちょうど片足づつ1分。歯磨きは必ずやる習慣ですので新たに「片足立ちやらなくちゃ!」と勇まなくていいというメリットがあります。

さっそく家人に言われた日のその晩から始めました。
外でお酒を飲んだ日は、ふらつきますので軽い飲み以外の時は、無駄なのでやりません。
てなことで本稿執筆時で1カ月くらい経ちました。

この片足立ちですが、「運動」といわれるくらいなので意外と一筋縄ではいかないことがわかりました。ふらつくんですね。ま、もしかするとふらつくのをこらえるのが運動なのかもしれませんが。

(つづく)

2016年12月13日火曜日

環(13) 6 第二の注意力

『力の第二の環』の最終回です。

カルロスがみんなに加わり出発しなくてはならないとラ・ゴルダが言いました。(だからどこへ(笑))
これから自分たちが持っているものを壊すのだといい、「第二の注意力」についてラ・ゴルダとの長いディスカッションがあります。

カルロスは、ドン・ファンと歩いているとき、落ちてくる岩で死ぬかもしれなかったエピソードを想起します。また、カルロスがメキシコシティの航空会社のロビーで時空を超えたのは10時でしたが、それが彼の新しい時間なのだそうです。(環320)

このあたり、あたしには、意味深な印象のエピソードを並べているだけのように思えました。

それからナワールがしてくれたテーブルと包みを利用したトナールとナワールの講義があります。

この内容について本書のあとがきで訳者による図解がありますので詳しくはそちらを参照してください。実はあたしは軽く読み流しているだけです。(環326)

ラ・ゴルダとの見つめることの修行についての長いディスカッションが続きます。(環323~336)

ここで、第二の注意力を集めるための体術の紹介があります。(環337)
でも「第二の注意力」は、異次元のことなのか、はたまた「集めるような」文字通り「力」なのか判然としません。

カルロスは、姉妹たちと一緒に家の表に出て動作を行います。
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まぶたを半分閉じ、ふたつの大きな丸い丘が重なっているところを見つめるようにと、彼女が言った。(中略)見つめることには四つの別々な動作がふくまれている。最初は、帽子のふちで余分な陽の光を遮り、必要最少の光だけを目に入れる。次にまぶたを半分閉じる。三つめは、目に入る光を一定に保つためにまぶたのあけぐあいをうまく保つ。そして最後に、まつ毛を通る光線の網目を通して、その谷を背景のなかで分離する。
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このあと、おなじみの立体視の目の使い方をして景色をみます。
ずっと座ってると第二の注意力が集まるのだそうです。

その後、戦士の力の起立を見せてもらいますが詳細は割愛します。(環349)

暗い部屋の中に入り、四人で抱き合っているうちに彼らは非日常的感覚に入っていく。
気が付くと、パブリト、ネストール、ベニーニョの三人がいて水をかけて庭に倒れている彼らを目覚めさせてくれました。
いつの間にか自分たちが庭に移動していたことに気がつきます。

ラ・ゴルダはでかけるでかけるといいます。

またでかけるそうですが、この本では結局、その後のアクションも事件も起きません。
多くの読者が言っているように、この『力の第二の環』以降の著書は、最後の『無限の本質』まで、わりと退屈な内容が続きます。



2016年12月12日月曜日

環(12) 5 夢見の技術

ラ・ゴルダがカルロスに「忍び寄りの術」について説明をしてくれます。(環254)

ラ・ゴルダは、夢見の人。カルロスの分身(二倍の分身)は夢見なのだそうです。
ドニャ・ソルダードと死んだ娘の関係、ホセフィーナと彼女の母親の関係を例にとり力の話をします。(環273)

続いて、注意力についての説明。(環279)そして、その男女の違いについて、ラ・ゴルダの解説が続きます。

そこに、三人の妹たちが加わり、カルロスに盟友を呼ぶようにラ・ゴルダがいい(環292)、口笛で盟友を帰らせます。

妹たちが部屋の中で、壁に垂直になった状態で滑ったり気味の悪い芸当を見せてくれます。そしてカルロスは、いつのまにか、家の中にいると思っていたのに丘の上にいたことに気づきます。

ラ・ゴルダは、わたしたちが盟友に投げとばされたのだと言います。(環304)

そこで、カルロスは妹たちの芸当を実際に「見ていた」ことを思い出しました。(環306)

これらの体験からカルロスが理解した内容を引用します。
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ドン・ファンは、わたしたちの存在の核となっているのは知覚の技術であり、わたしたちの存在の魔力は認識の技術だ、と言っていた。知覚と認識はひとつの、機能的な、分離しえない単位、ふたつの領域をもったひとつの単位になっていたのだ。第一の領域は「トナールの注意力」だ。言い換えると、日々の生活を送る日常的な世界で知覚し、認識するふつうの人々の能力だ。ドン・ファンは、この注意力の形式を「力の第一の環」と呼んでいた。そしてそれを、日常的な世界での近くに秩序を与える畏るべき、しかしあたりまえの能力だ、と言っていた。
第二の領域は「ナワールの注意力」だ。それは非日常的な世界で認識する呪術の能力を言う。彼は注意力のこの領域を「力の第二の環」と呼んだ。あるいは、非日常的な世界に秩序を与える驚くべき能力、とも言った。その能力は、わたしたちだれもが備えているのだが、呪術師しか使わないのだ。(環309)
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なんだかんだといちゃもんをつけていますが、ドン・ファンの知覚に関する知見は、ドン・ファンオリジナルのものなので上記の認識は非常に重要です。

夢見をするためにはエネルギーが必要なのだそうです。(環310)

エネルギーを得る最良の方法は、目に、とくに左目に陽の光を入れることだ、とドン・ファンが言っていました。
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半分閉じた左目に陽の光を入れて、ゆっくりと頭を左右に動かすのだ。使えるのは太陽だけでなく輝く光ならどんなものでもいいということだった。(体術)(環310)
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ラ・ゴルダが出発するころだと言いました。

場面転換がないためでしょうか、どこにいても、いつでも、ずっと出発すると言い続けているような気がします。

2016年12月11日日曜日

環(11)4 ヘナロの弟子たち(2)

カルロスは、パブリトにあの日、ネストールも底なしの深見へジャンプしたのだと言われ驚きます。
ネストールは、(みんなを目撃したので)それでウィットネス(目撃者)と呼ばれるようになったのだそうです。

カルロスがネストールにジャンプのことを尋ねます。

ネストールは、カルロス、パブリトの二人のあと、しばらくしてからジャンプしました。(環234)
彼は、二人のジャンプを「ウィットネス」として見届けたのです。

ふたり(カルロスとパブリト)は抱き合って、あの端へ走って行くのが見えた。それから、ふたりとも凧みたいに空へ舞ったんだ。パブリトはまっすぐ飛んで行って、落っこちた。きみは少し上へあがって、あの端から少し離れてから落っこちたよ

カルロスはそれは幻覚ではなかったかと尋ねますが逆にあきれられてしまいます。
それから三人でのジャンプ議論が続きます。

二人のジャンプの後、ネストールは神経がずたずたになって気を失ってしまいます。(環239)
意識がもどってドン・ファンとドン・ヘナロを捜しましたが二人は、行ってしまったあとでした。(どこに?)

ドン・ファンとドン・ヘナロは、二人がジャンプをしたあと手をふってネストールにも別れをつげていたのです。

悲しくなったネストールは、コヨーテになってジャンプしたのだそうです。

生き返って気がつくと、マザテックの老呪術師、ポルフィリオ(Porfirio)の小屋で座っていました。それからポルフィリオの元で修行をします。

マザテックは、ドン・ヘナロと同じ部族です。このポルフィリオという人は長いドン・ファンのシリーズでもここにしか登場しませんが、ヤキ・インディアンが幻覚性植物を使わないというのが正しいとすると、ドン・ファン=実は、マザテック説というのもあり得るかもしれません。(もちろん、ホイチョル族説も有力です)

一方、エリヒオはベニニョと一緒にジャンプしたそうです。(環242)

カルロスがジャンプのあと(生き返ってから)見た生々しい夢や幻影、中でも不思議なチャコールグレーのドームについて話すと、そのドームに、ナワールとヘナロがいるのだと告げられます。(環246)

ラ・ゴルダがいきなりやってきたので男たちは、そそくさといとまを告げました。

なんだか、登場人物が、脈絡なく行ったり来たり、出はいりしているだけのように思えます。

2016年12月10日土曜日

環(10) 4 ヘナロの弟子たち(1)

家に戻ると、妹たちはソルダードの回復を手伝って不在でした。
その家に、ヘナロの弟子たちがこれからくるそうです。

これまでパブリートが家のリーダ格でしたが、とにかく人望がありません。
ラ・ゴルダは、彼女を迎えに来た(?)リディアと一緒に出て行いきましたが、昼過ぎにもどってきました。

それにしても、右往左往しているだけで、何も事態が進まないのがこの本です。

さて、そこへパブリートが来て、いきなりカルロスをマエストロと呼びます。

彼は、ラ・ゴルダと険悪な関係だとカルロスにうったえます。

カルロスが知りたかったあの深淵に飛び込んだときのことを聞きますが判然としません。
パブリトは、目が覚めたら昔のヘナロの家にいたそうです。(環204)

そして、女たちに家を追い出されて、三人(ネストールとベニニョ)で一緒にヘナロの家で暮らしているのだそうです。
これからヘナロの家に行こうと誘われますが、ラ・ゴルダにとめられます。(環208~9)

ナワールは彼らのことをトルテックと呼んでいたそうです。
トルテックとは、謎を受け取る者という意味だそうです。ドン・ファンが、彼らを呪術師とか魔女というかわりにトルテックと呼んでいたことは、カルロスは知りませんでした。

パブリトはラ・ゴルダたちを本当は嫌いなんかじゃないともいいます。
パブリートの母は、かつては美しくマヌエリータと呼ばれていたそうですが、ドン・ヘナロとナワールに出会って、マヌエリータは「殺され」、魔女ソルダードになったのだといいます。

パブリトは、自身のヘナロ、ナワールたちとの出会いについての話します。

彼の親方が病気になってかわりに町へ行って恋人ができ、店で彼女とセックスができるように細工をしたところ店が揺れているのをヘナロたちに見つかってしまったというような話をします。(環217)

そこからじわじわと二人のワナにはまって呪術師の世界に陥っていく過程ですが、恋人との普通はあり得ない状況でのセックスが呪術への入り口というシナリオは、タイシャ・エイブラーのエピソードと非常に似通っています。

パブリトは、屋台の下に隠れてのセックス。タイシャもお店の厨房でのセックス。
いずれもカスタネダの好きな性的嗜好または幻想なのだと思います。

そこに到着したネストールとベニニョが話に加わります。
ネストールは、以前と比べ精悍になっています。
ベニニョはなにやら様子が変です。
そしてラ・ゴルダまでもがカルロスを「ナワール」だと言い出しました。

男性陣は、四人の女姉妹たちの悪口をいい募ります。

2016年12月9日金曜日

環(9) 3 ラ・ゴルダ(2)

ラ・ゴルダは、以前の夫との荒れた結婚生活からパブリトに出会い、そしてナワールに出会うまでの半生をカルロスに語ります。

子供を産んだことにより失われた自分の完全さをとりもどすために、二人の子どもとの愛を断ち切った話をします。

これはカスタネダの「教義」というかカルトの基本となる親類・友人・縁者と縁を切らせる考え方ですが、ドン・ファンが当初言っていた「履歴を消す」という考え方とかなり異なっている気がするのです。カルロスが出会った当初、ドン・ファンはお嫁さんや息子と普通に日常生活を営んでいましたからね。

すると、ラ・ゴルダがとつぜん「(完全さをとりもどしたので)子どもなんかもったことないのよ」といいスカートをまくりあげて自分の性器をカルロスに見せました。(環155)

ドニャ・ソルダードの誘惑の仕方などとよく似た、露骨な動作です。
これは、タイシャ・エイブラーの『呪術師の飛翔』にも表れる表現で、いずれもカルロスの著作に共通の表現というか趣味?かと思われます。

ここで、ラ・ゴルダより、ナワール(ドン・ファン)には、息子が三人と娘がひとりいたと語られます。(環158)

これが部分的に真実としますと、かつて事故で亡くなったドン・ファンの息子は三人の内の一人ということになります。

ラ・ゴルダが自分のかすかな光をみせるといってスカートの手の中にいれてスパークを飛ばしますが、これは後に述べられる内容で小便だということがわかります。(環161)

ラ・ゴルダは、これでナワールとヘナロが持っていた四つの盟友に会う準備ができたといいます。
リストアップしますと、

1)ドン・ファンの直方体(モノリス系)
2)ヘナロの巨大な目をした真っ赤な男

この二つにはカルロスよく出会ったと言いますが、以下の二つには一度しか会ってないそうです。

3)黒いジャガー
4)大きなコヨーテ

盟友の登場に怯えたゴルダが「両手におしっこ(piss)をかけて」といわれ戸惑うカルロス。(環165)
おしっこのスパークが近づいてくるものを追い払うのだといいます。

でも、自分で呼んでおいてどうしてそのように慌てるのでしょう?支離滅裂です。

二人は、逃げ惑いドン・ヘナロに家にいくことにします。

ドン・ファンもドン・ヘナロも自分の親指大のくびれのあるひょうたん(gourd)に盟友をしまってあったのだといいます。

盟友は、ポケモンや陰陽師のお話に登場する式神でしょうか。
ひょうたんは、初期の作品にもしばしば旅の道具として登場しますが、初期のドン・ファンは、ひょうたんに盟友が入っていることはまったく触れていません。

そこで、カルロスにはジャガーに見えていた盟友が、ラ・ゴルダには別の形態に見えていたことがわかり盟友の見え方は様々で実態がないものだということがわかります。

次に、ラ・ゴルダは、カルロスに人間の鋳型(human mold)の説明をします。

それにしても、修行期間が短いラ・ゴルダがまるで師匠のようになんでも知っているのでしょうか?
著者のカスタネダとしては、師匠なき今、作品の中で教師役を作り上げるしかなかったのかもしれません。

細々とした呪術の奥義をラ・ゴルダと話し合ったあと、二人は盟友を呼び出す実験をしてみました。
突然巻き起こった風にラ・ゴルダは空に吹き上げられてしまい落下してふわりと着地し、二人は、妹たちの家に逃げ帰ります。

2016年12月8日木曜日

環(8) 3 ラ・ゴルダ(1)

ラ・ゴルダとの話を聞いているうちに、この家で受けた数々の仕打ちに腹がたって来て家を出ると彼女が車に乗りこみついてきました。

そのとき、ラ・ゴルダが家と丘に対する別れの挨拶をします。(環133)
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両手の指を組んでへその下に当てた。そして向きを変え、谷に向かって同じ手の動作をくりかえした。(体術)
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これは子宮がある女のしぐさで、男は手を胸のところにあてるのだそうです。

ラ・ゴルダは、ドン・ファンとドン・ヘナロがどこにいったか知っていて、そこへカルロスを連れていくように言われていると告げます。(環135)

ですがカルロスは今は不完全なので、その場所を今教えるわけにはいかないと言われます。

カルロスは、はじめはメキシコシティに行くつもりでしたが、ラ・ゴルダにナワールと行っていた山に行ってほしいと言われそこに向かいます。

到着したのは以前、ドン・ファンとすごしたことのある峡谷にある洞穴でした。(環137)

「力の戦い」で過ごした洞穴でしょうか?

ラ・ゴルダによると子どもをもったことのある人間は不完全な人間で、お腹に穴があいているそうです。(環138)

お腹の左側に穴がある場合は、その穴を作った子どもは自分と同性、右側にあれば異性。左側の穴は黒で、右側の穴はこげ茶色だと言います。

「あなたの右脇にはこげ茶の穴があるわ」
「ということは、あなたをからっぽにしたのは女ね。あなたには女の子がいるでしょ。」(環139)

この「女の子」は、カスタネダのペルー時代の婚約者が生んだ子供です。(こちらのエントリーもどうぞ

ラ・ゴルダには、もともと二つの穴がありましたが、ひとつはナワールが手伝って塞いだそうです。

「ナワールが、あなたにはあなたも会ったことのない娘がいる、と言っていたわ。それであの男の子を愛しているんだって」(環141)

その婚約者の子供とカスタネダはその後、会っています。

カルロスは、男の子のことをはなしはじめます。
もちろんC.J.カスタネダのことです。

カルロスがほら穴を去ろうとすると、ラ・ゴルダは彼がここで力と会う約束があるから去れないとつげられます。
カルロスは、またまたトリックにしかけられているのかと思います。(環145)

カルロスやドン・ファンがトリックという場合、訳語が「罠」となっていることも多いようです。
ここでいうトリックは、単にだますというよりは、なんらかの呪術的な試練としての仕組まれた苦難のような意味合いで使っているようです。

2016年12月7日水曜日

環(7) 2 妹たち

ブログ記事の元原稿をあらためて見ますと、できごとが散発的で脈絡がないことがよくわかります。
彼らが何を目指しているのかよくわかりません。

たとえば、会話をする居場所を移動する理由や目的など、対話にメリハリをつけるために入れただけのようにも思えます。

言い訳になってしまいますが、以降の要約や抜粋が箇条書きのような雰囲気になってしまうこともあると思いますがご容赦ください。

ローザとリディアはほっそりとして可愛いく、残りの二人はよく知らないが、エレーナは巨大だった。(だからGordaというあだ名になったのですね)

リディアは、カルロスが先の戦いでドニャ・ソルダードの魂を取ってしまったのだと言います。(環86)

二人の妹たちは、カルロスにばれないように足の動きを通して行う暗号のような沈黙のコミュニケーション・システムを使っていることに気がつきます。(環87)カルロスがわからないと思っているようですが、どうやらリディアが指示する立場のようです。

ドン・ファンは、リディアが才能があると言っていたそうです。
ローザは騒々しくて親しみやすいキャラクターです。(環88)

カルロスは、なんだかんだいわれてまた家の中に閉じ込められてしまいます。

家の外に盟友がうろついていると言われ、それを教えられるのはラ・ゴルダだとローザが言います。

妹たちは、この家には住んでなく何年も前に同じ地区の自分たちの家に引っ越しました。
パブリトもその時引っ越してネストールとベニニョと暮らしています。

男と女と別れたのですね。カスタネダのパンドラ邸と同じです。
逆にパンドラ邸の暮らしかたの方を物語に合わせたのかもしれません。

カルロスにやっつけられたドニャ・ソルダードは、ゴルダがどこかの治療師のところに連れて行ったようです。

ホセフィーナは、ウィットネスを呼びに行ったそうです。聞かないあだ名に戸惑うカルロスに、ネストールのことだと教えます。(refer to 570@pdf of Tales of Power)(環97)

会話の成り行きで、カルロスが感情を爆発させたのをきっかけにローザが呪術で武器のようになった左手で攻撃をしかけてきました。

脈絡がない展開ですが、実際のカスタネダもかなり激昂するタイプなのでありえない話ではないです。

ふたたび首の後ろがポキっとなってローザが持っていた棒(手が持っているように見えた)をつかんで砕きました。

首のつけ根で聞こえる奇妙な音は、人がスピードを変える瞬間に出る音だとドン・ファンが言っていたそうです。

(古いネタですが)加速装置ですか?

ローザの攻撃は「夢の手」というもので、痛んだ彼女の手は、攻撃したカルロスしか治せないそうです。

ドニャ・ソルダード(の幻影)の額とローザの手からカルロスの目には見える黄色いネバネバを取って治療?しました。

その後、リディアとローザを車に乗せて出発しますが、行く当てがありません。
カルロスは、いつの間にか(新ナワールとして)リーダー扱いされています。

カルロスは、彼女たちのところに来てから、頭のてっぺんのむずがゆい感じがして「世界を止める」ことをようやく実感します。(環106)

カルロスの能力は覚醒し、ラ・ゴルダとドニャ・ソルダードの居場所がわかったり、ローザとリディアの家の場所がわかります。二人の家まで行きましたが中には入りませんでした。

カルロスは、リディアにあなたはからっぽ(empty)だと言われます。(環111)
右のわき腹に穴が開いているからだそうです。

子どもを産んだゴルダとドニャ・ソルダードにも穴が開いているそうです。

また、意味がよくわかりませんが、ネストールもドン・ヘナロそのものになってみんなに嫌われていると教えられます。(環113)

そこにホセフィーナが戻って来ました。
ホセフィーナには子供がいて、その子供の父親はナワールだそうです。(環117)

老人やおし(原文ママ)のフリをしたホセフィーナと他の三人の姉妹にからかわれて怒りにかられたカルロスは、また分身を創り出し彼女らと対峙しますが、ちょうどそこにラ・ゴルダが帰宅します。

それにしても脈絡がなく啓発されるエピソードのない展開です。

2016年12月6日火曜日

環(6)1 ドニャ・ソルダートの変身(5)

前項までドン・ファンとドン・ヘナロの師弟(妹)関係の整理のような内容をドニャ・ソルダードがカルロスに教えてきたという流れですが、油断したカルロスにドニャ・ソルダードが不意打ちで襲いかかります。

カルロスは首をヘアバンドで締められますが、苦しくなってきたら首のちょうど気管のうしろあたりでぽきっという音がしました。

この「ポキっ」が、カルロスのダブル(分身)を生み出すスイッチみたいな感じでして、この後、カルロスは、自分が天井の上から見下ろしていることに気がつきます。

幽体離脱ですね。(環71)

カルロスは、怒りにまかせ、自分の幻影のような姿のこぶしでドニャ・ソルダード額を殴ってしまいます。

カルロスの恐ろしい攻撃におびえたドニャ・ソルダードは、戦意喪失してまた語り始めます。

パブリトとエンストールとベニニョはカルロスと目の方角が同じだそうです。

今日、カルロスを攻撃したのは、ナワールに誘惑しろと言われていたからだと告白します。
ナワールがおまえさんは女が好きだから」って教わった。(環76)
The Nagual told me that you like women.)

Amy Wallaceの本を読んだあとでは、まったくその通りだと言わざるをえません。
というか、よく自分で自分のことをぬけぬけと書けますよね(笑)。
B.B.Kingの自伝で彼が友人からセックス中毒じゃないかと言われたって下りがありますが、カスタネダも負けてないと思います。
なってたってセックスするのに飽きちゃうくらいですから

さて、ここで登場したカルロスの分身ですが、翻訳版の本文では、「二倍の分身」となっています。
呪術師の分身については、これまでの巻で、ドン・ヘナロの「ダブル」または「分身」という表現が使われてきていますので、今回、「二倍の」とつけたからにはそりゃ「でかい」か「強い」か「凄い」のだろう。

特に、この本では分身の力によってカルロスが魔女たちを退治するだけに。普通の(って言い方もへんだけど)分身より強力な分身Zみたいなものなのかと思いますよね。

でも一応、原文をチェックしたんですよ。すると「double」だったんです。これまでも分身はずっとdoubleだったので、今回のダブルは特別なものではなく翻訳するなら「ダブル」または「分身」という表現にすべきだったのだと思います。

ダブルには、二倍のという意味もありますが、それ単体で「分身」という意味ですので「二倍の分身」ですとダブル・ダブルです。

ドニャ・ソルダードは、この戦いに勝ったらカルロスは(新しい)ナワールになる、と言います。(環80)

そうこうするうちに、妹たちが帰ってきました。

2016年12月5日月曜日

環(5)1 ドニャ・ソルダートの変身(4)

さて、続いてドン・ファン組の弟子たちについてです。(環63)

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(1)カルロス
(2)エリヒオ
 彼は、完成されたのでナワールとヘナロのところへいってしまったそうです。
 それって死んだってこと?
(3)~(6)ラ・ゴルダと妹三人
(7)ドニャ・ソルダード
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と、今回はここまでですが、その後、(8)フロリンダ・ドナーと(9)タイシャ・エイブラー、それと自称弟子だったという(10)Merilyn Tunneshende
がいますが、この三人は(おそらく、十中八九)ウソです。

つづいて、ラ・ゴルダと三人の妹の詳細に移ります。

◎リディア(Lidia)
ドン・ファンの最初の弟子(環59)。リディアの面倒をみるためにドニャ・ソルダートが雇われたそうです。リディアの少し後に、カルロスをドン・ファンが見つけました。
三年の間、この二人だけが弟子でしでした。(61年~63年)

◎ホセフィーナ(Josefina)
リディア、カルロスに次ぐ弟子。気がおかしくなっていた時、呪医ヴィセンテ(Vicente)に診てもらっているところでドン・ファンに出会ったそうです。弟子になってからドン・ファンをめぐってリディアと争いました。

ヴィセンテは、以前は、ヴィサンテと翻訳されていましたが、以前登場した呪術師との関連性が書かれていて興味をひかれます。カルロスに草を贈った呪師ですね。

女性同士を嫉妬で競わせるのはカスタネダのやり口です。

リディアとひよこの話、ホセフィーナの編み物と木の葉の怪我の話などの逸話が披露されています。

◎エレーナElena(ラ・ゴルダla Gordaのこと)ホセフィーナの入門から一年後に弟子入り。とても太っていました。はじめはパブリトが自分の店で使っていました。最悪の状態(って?)でしたがナワールがひょうたんから盟友を出して救ったそうです。
「最悪」の詳細は書かれていませんが、ラ・ゴルダはからっぽ(empty)だったそうです。

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それから何年かしてエリヒオを見つけた、とあります。
エリヒオ(エリジオ)の入門は、1968年9月14日です。(分離99)



◎ローザ
エリヒオを見つけてひと月したらローザ(Rosa)を見つけました。ドン・ファンは、これで最後だとわかったそうです。

エリヒオの入門時期がはっきりしているので、ローザとの出会いは、1968年10月中旬だということがわかります。
これは同年10月17日に、カルロスがパブリト、ネストールと一緒にドン・ヘナロの滝渡りを見た頃です。

ここでは、ローザが豚をおいかけていたエピソードが紹介されています。

◎ドニャ・ソルダード

ドン・ファンの弟子になって七年間と言っています。
カルロスは、ドニャ・ソルダードこの日まで5年間会ってなかったそうです。(環68)

(現在~カルロスとドニャ・ソルダードの対話~が)73年から76年の出来事とすると、ドニャ・ソルダードがドン・ファンに入門したのは、66年から69年の間のどこかということになります。

長くなってしまいました。また稿を分けます。

2016年12月4日日曜日

環(4)1 ドニャ・ソルダートの変身(3)

次のエントリーの「ドニャ・ソルダートの変身(4)」との関係で本稿は少し短めです。

ドニャ・ソルダードによると、ラ・ゴルダはカルロスがよりも後からドン・ファンの弟子になったそうで、ここから他の弟子たちについての説明が始まります。

まず、カルロスが実際に弟子入りの儀式に立ち会ったエリヒオの話が出ます。(環53)
彼女によると、エリヒオはもうこの世界にはいないそうです。エリヒオはずばぬけて優秀だったから崖から飛び降りる必要がなかったのだと言います。

カルロスが崖から飛び降りた時、実は、彼も含め四人がジャンプしたと言われます。
(『力の話』では、たしかにパブリトとカルロスの二人だけだったように描かれています)

カルロスは、だとするとドン・ファン、ドン・ヘナロ、パブリト、カルロスの四人がジャンプしたのかと尋ねると、カルロスとヘナロの三人の弟子のことだと言われます。

カルロスは、パブリト(Pablito)とネストール(Nestor)は知っているが弟子がもう一人いたのは知りませんでしたが、ドニャ・ソルダードが、それはベニーニョ(Benigno)だと教えてくれます。

ベニーニョは、メキシコ南部出身で、ヘナロの一番古い弟子だそうで昔砂漠で出会った5人の若いインディアンの一人だそうです。(一応、リンクを張ってみましたが、リンク先の記事の若者たちは四人なんですよね。違う連中なのかもしれませんね)

ベニーニョは、先生(ドン・ヘナロ)と師(ドン・ファン)の両方をみつけたられたから幸運なのだそうです。

さらに、これまでパブリトの姉妹だと思っていた四人の女性は、みなナワール(ドン・ファン)の弟子だったのだそうです。(環55)

ドニャ・ソルダードは、弟子たちはみなナワールの子供なのだといいます。
ドン・ファンは、女が四人と男が二人、都合、六人の子どもを作り、ヘナロは男を三人。弟子の総数は二人の師匠で全部で九人だそうです。(環57)

■ヘナロ組の弟子

◎ベニーニョ
◎パブリト
◎ネストール

男性は、名前だけであっさりですが、次回は、ドン・ファンの弟子たちを少し詳しくリスト・アップします。

2016年12月3日土曜日

環(3)1 ドニャ・ソルダートの変身(2)

(ご注意)ちょっとだけ性描写あります。

カルロスは、なかば強引に部屋につれこまれてしまいます。

ドニャ・ソルダードがナワールに習って作った粘土板の床は、呪術の力がそなわっていて、カルロスは、ドン・ファンがドニャ・ソルダートを弟子にしていたのだと思い至ります。

リアリティの高く感じられる呪術ですよね。うまい!

ドニャ・ソルダードが、いきなりスカートをぬいで股のあいだをなでつけながら「二人はひとつになるんだ」と叫んで迫られます。(環23)
戸惑う、カルロスに、彼女はドン・ファンにカルロスを誘惑するようにいわれたといいます。

ムードが高まっているならいざしらず、このような露骨な態度で誘惑できると思う表現が理解を超えます。これに類する表現が他でも散見されているし、Amy Wallaceの著書にも実際にそんな場面があります。西洋人文化とわれわれの違いでしょうか?

その後、車に逃げ込み脱出しようとするカルロスを巡って表にいた犬も交えた三つ巴の争いが繰り広げられます。
強力な呪術で脱出がかなわないと見たカルロスは再び家に逃げ込みます。

その後、カルロスとドニャ・ソルダードの対話が続きます。
彼は、パブリトもネストールも自分も、もう何年もドン・ファンやヘナロの弟子として修行しているのに、いっぱしの呪術師になれていない。
なのに、ドニャ・ソルダートがこんな短期間でなれるのだろうか?という疑問を持ちます。(環30)

あたしも不思議です。この後に登場する四姉妹、特にラ・ゴルダの熟練度が不思議です。
ちなみに、ラ・ゴルダ(la Gorda)のgordaは太った女性というスペイン語だそうです。

二人は、自分たちと風向きについて話します。
ドニャ・ソルダートは北風なのだそうです。(環40)

この巻以降、フィクションであることがわかっているのに、こうした意味深なメッセージやシンボルについて記す必要があるかどうか迷うところですが、一応ということで。

ドン・ファンがラ・ゴルダ(la Gorda)に関わっていた(要するに男女の間柄だった)とドニャ・ソルダートがいいました。
カルロスは、ドン・ファンと女のかかわりをこれまで聞いたことがありませんでした。(環43)

あたしたちもです。だって実在(従来?)のドン・ファンは、普通の家庭人だったからですよね。

ドニャ・ソルダートは、ドン・ファンに自分の「方角」を変えられたことをカルロスに告げます。カルロスも実は、同じことをされたといいます。

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わたしはそのことについて人と話したことが一度もなかった。
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この展開は、”テンセグリティ”と同じ流れです。

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(ドン・ファンが)20フィートくらい離れたところに小さな火を二つおこした。
首を左にねじって肩を動かさずに目をもう一方の方に向けさせた。
新しい方角は南東だった。(体術)(環45)
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ドン・ファンのガヘ(ひょうたん:gourd)と盟友やメスカリトとの関係についての説明がされた後、風と女の関係について述べられています。(環51)
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そよ風は東。陽気で、口が上手で、あてにならない。
冷たい風は西。機嫌が悪くて、ゆううつで、いつももお思いにふけっている。
暑い風は幸せで、放埓で元気いっぱい。南風。
強い風は北。精力的で、人のものを取りたがって短気。
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血液型占いのようなイメージですね。

2016年12月2日金曜日

環(2) まえがき~ 1 ドニャ・ソルダートの変身(1)

■まえがき

前期作品群のクライマックス『力の話』の最後で、シエラ=マドレ山脈の西斜面にある平らで荒れた山頂から深淵に飛び込んだあと、こうして続編を書いているカルロス・カスタネダは、自分に一体何が起きたのか? その不思議にとらわれています。
幻覚のように思えたのに、確かに谷底へ飛び込んだような気がしています。

そして、ドン・ファンとドン・ヘナロという二人の師匠が「もはや手のとどかないところにいる」という寂寥感。(環9)

その秘密を探るためにカルロスは、再び、ドン・ヘナロの弟子たちに会いにメキシコに向かいました。

■1 ドニャ・ソルダート(Dona Soledad)の変身

カルロスは、自分が本当に崖から飛び降りたのか確認するために、パブリトとネストールに会いに行くことにしました。

時期については記していませんが、(パブリトたちが実在の人物だったとすると)この本は77年出版ですから執筆が半年前として73年から76年という感じでしょうか。
ドン・ファンが亡くなった(あるいは会わなくなった)のが上記の時期ですので辻褄はあっています。

彼らは家にいないような気がしたので町に行くことにします。
ドン・ファンに会えるかもしれないと思いながら市場などをぶらぶらしています。
いまだに、ドン・ファンが生きているあるいは会ってくれると思っているわけです。

でも、これまではこんな場合にひょこっと現れるドン・ファンに会えません。
そして「彼は行ってしまったのだ」と嘆きます。(環11)

再会をついに諦めて、またパブリートの家に行くことにします。
彼が以前会っていた時、ネストールは一人暮らしをしていました。
パブリトは母親と四人の姉妹と暮らしていたので人気の多いパブリトの家を選んだわけです。

しかし、迎えに出た彼らの母親のドニャ・ソルダートの様子が何かおかしいのに気づきます。
50代後半以上だったはずなのに、二十歳も若く見える上、カルロスを誘惑しています。

二人の会話です。
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「ヘナロはもう帰ってこないよ」
「それじゃ、ドン・ファンは?」
「ナワールも行ってしまった」
「どこへ?」
「知らないのかい?」

わたしは、二年前にふたりともわたしに別れを言ったことを、わたしの知っていることといえばそのときに彼らがどこかへ出発したことだけだと言った。

「もう戻ってこないだろうってこともたしかさ」
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いつまで経ってもカルロスだけが状況を知らないようです。

2016年12月1日木曜日

呪術の彼方へ ~力の第二の環~(1) 概要

初期の四巻までのおさらいが一通り済みました。

これ以降は、ドン・ファン(が誰であれ)との対話という元ネタがなくなりカスタネダ独自の世界が登場人物たちの口を借りて語られていきます。

内容は以降、虚構だけになっていくので、おさらい作業はやらなくてもいいのではないかと思いますが、見落としている手がかりのようなものがあるかもしれないのでサラっと進めていければと考えています。

英文の上、量が多かったAmy Wallaceの『Sorcerer's Apprentice』もようやく読了しましたので、そちらのお披露目の準備も並行して進めて行こうと考えています。

この「第二の環」から、従来のシリーズには登場しなかった「女性」という要素が加わり妖しげな雰囲気になっていきます。そして事態がやけにややこしいことになっていきます。

男子校の間は平和だったのに、共学になって事が面倒になってきたような感じです。

もちろん以前もラ・カタリーナがいましたがあくまでも”点景”としての存在で、直接舞台に登場して言葉を交わしたりしたことはありませんでした。

ネタばれになってしまいますが、以降の巻で謎の存在の一人、”女ナワール”という呪術師に関する言及が増えていき、終盤になって彼女の名前が”キャロル・ティッグス”だということが判明します。

キャロル・ティッグスは、実在の人物で、カスタネダのサークルでは”Muni Alexander”という呪術名をもらいます。キャロル・ティッグスは、10年間、”第二の注意力”と呼ばれる”あの世”から生還した謎の存在というふれこみですが、実は呪術師でもない普通の人間だということが判明しています。

一方、この『第二の環』で活躍するラ・ゴルダをはじめとするパブリトの妹たちは、実在が怪しいと思われます。かろうじてラ・ゴルダだけが、もしかすると相当する女性がいたのでは?という下りがAmy Wallaceの著書に書かれていますがいずれもカスタネダが彼女に語った話なので信用できないかもしれません。

女性陣が活躍しだす、こうした後期シリーズは、実在のキャロル・ティッグスやフロリンダ・ドナーなどカスタネダのハーレムを”伝説”にし正当化するための下準備のために書かれたものかもしません。ひねくれすぎでしょうか。