まずは、大昔の「マルチメディア時代」の話から。
ヴォイジャーの「エキスパンデッド・ブック」は、HyperCardで開発された米国版のExpandedBookを日本語化したものでした。
HyperCardというのは、Macintoshを買うとはじめから入っているアプリケーションの一つ。
ビル・アトキンスンという天才プログラマが創造したオーサリング・ツールで、現在のアプリでいうとFlashとPowerPointが合体したようなものでしょうか。
プログラミングが可能なパワーポイントみたいな感じ。
KindleやらiPadやらで電子書籍アプリを使うと、動く「絵本」みたいな作品が結構あるでしょ?あんな感じのものやゲーム類が15年前くらいも結構出回ってまして、多くがHyperCardで作られていました。
それまでMS-DOSマシンをいじっていたあたしはHyperCard触りたさにMacintoshに鞍替えして、そして虜になりました。
自分でいろいろ表現できる超便利道具を手に入れてとても幸せでした。
多くのマルチメディアタイトルの中に、フランスの美術歴史学者ダニエル・ギャリックが一人で作った「レオナルド・ダ・ヴィンチ」という作品がありました。
ねちっこいつくりで奥が深い。動く歴史読物、ドキュメンタリーといった内容に感動しました。伝を頼って作者のダニエルにコンタクトしてもらい日本語化の許諾を受け、インフォシティさんに製品化してもらいました。このタイトルは日本でも成功したので、ダニエルにお礼を伝えにフランスに出かけました。
ダニエルは高齢で、その後亡くなってしまったのですが、今でもダニエルと二人でゆっくり歩いた大学の柱廊が思い出されます。
元のHyperCardは外国の製品なので縦書きが無い。ヴォイジャーが日本語版の「エキスパンデッド・ブック」を発売したのですぐにとびつきました。ウェブでの文字表現、デジタルテキストの世界にはまり込んで行きました。
時代が流れ、再びデジタル書籍のブームが来ました。「第二次電子書籍ブーム」ですね。
正月、出版社につとめる先輩に会いました。当然、話題は電子書籍になるわけで、僕はやはし本は紙がいいですよね、なんてフったところ。
「あのね、つかさん。会社でも"紙”の本はこれからも無くならないだろうっていってるよ。でもね。紙の本って今に歌舞伎や狂言みたいな”伝統芸能”的な存在になっちゃうだろう。なんて言っている人がいるんだよ」
ってえことは、将来、紙の本を読んでると人から「いやぁ、さすが!紙の本っすか。渋いっすね。紙の本の方はまったく苦手でね」なんてなんのかなぁ……。
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