2007年10月18日木曜日

二木診療所

王診療所つながり、ということで。
かの、石井ふく子氏も贔屓にしていた、「二木診療所」については、昔ウェブ日記(ブログではありません)で触れたことがあります。以下、抜粋を再掲します。

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……あたしの周囲に土木・建築関係者が多いことが知れると思う。彼らは、一様に腰を痛めているので、各々かかりつけの医者や民間療法師をよすがに生きている。

そうした友人達の間で「伝説」に近い存在が神田室町の「王(ワン)診療所」だ。
ぎっくりで同僚にかつがれて来た人間が治療後歩いて帰る。
しかも、効き目に尾ひれがつきがちな民間療法ではなくストレートな医院である。
もちろん保険も利用できる。

若い自分、職場で突然ぎっくり腰(ギックリは、いつも突然だが)になったとき建築設計関係の友達が教えてくれてあたしも何度かお世話になったことがあった。
それから何年もの間、ぎっくりに襲われることもなく、自然と王(ワン)先生ともすっかり縁がなくなってしまったので、再び強度のギックリに祟られたとき咄嗟に王診療所を思いつかなかった。

翌週に福岡への出張が決まっていて飛行機に乗らなくてはならなかったあたしには、どうしても即効で効く治療が必要だった。
その時、当時仕事でつきあいがあった先輩が、ある医者を教えてくれた。

「二木(ふたき)診療所」

新宿歌舞伎町の怪しげなテナントビルの上にあった。当時、院長の二木先生は、すでに相当の高齢で、実際の治療の段になるとこわもての看護婦二人が先生を抱えるように患者を寝かせたベッドの横まで「運んで」くる。

先生の頭は禿げ上がっていてあごひげは長く、年の割には大柄だった。白衣を着た姿は医者というより「仙人」のようだった。
凄みのある看護婦たちは患者に「はい。横になってズボン下ろして。はい。先生お願いします。」
というと患者が動けないように両脇から力いっぱい押さえつける。

なぜなら───。
なぜなら、二木先生がこれから打つ注射が猛烈に!猛烈に痛くて患者が跳ねて動くからだ。

看護婦達の腕っ節は強く、患者はうめくだけだ。終わると、ぞんざいな手つきで注射跡を消毒し追い払われる。

注射は一度の治療で数回から10回ほど、短い間隔であちこちにうつ。

ブス。ブス。ブスブスブス。ブス。ブス。ブス。

といったリズムで、ある時は深く、あるときは浅くすばやく。
「注射」というよりは、「鍼(はり)」治療の(呼び名はなんというのだろう)「置き鍼」ではなく手早く打ちまくる鍼テクニックに近い。
実際に針を打っている箇所も鍼のツボの場所のような気がする。

ただ、鍼と違うのは、鍼が気持ちいいのに、こちらは猛烈に痛いということだ。

あたしは、打たれ、のたうちながら思い出しました。

「これは! 神田の王診療所」と同じ治療だ!」

そして治療後、痛みはウソのように薄らぎ、あたしは無事出張業務を終えることができた。
その後のぎっくりでも治療が痛いので、二木診療室には、本当に切羽詰らないとでかけなかった。
そして、しばらく通わないでいると靖国通りから「二木診療所」の看板が消えた。
おそらく先生が高齢のため廃業したのだろう。

となるとあたしの知る限り、あの「技」を持っているのは神田の王先生しかいないではないか。

王先生は、名前からもわかるように日本人ではない。(もはや国籍は日本かも?)

絶妙の中国訛り(ひょっとして演出か)が、余計に効きそうな雰囲気をかもし出している。幸い王先生には後継者の先生たちがいるので、先生の技をマスターして後世に伝えていってもらいたい。

そうそう、看護婦たちの威勢がいいことも二木先生と似ていると思った。両先生たちには、きっとつながりがあるに違いない。
ちなみに、脱税でつかまったTBSの元P、石井ふく子氏は、二木診療所の常連だったそうだ。

そしてあたしは上記の二医院しか知らないが、おそらく全国に似た治療をしている医師が意外といるのでは?と推測している。

※以上、「看護師」とは書いていない。自分達でも患者に接するときには「婦」と言ってくれているし。素晴らしい職業に敬意を表する。

(初出:2006年01月06日)

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