ホームにいる母は、無理だとわかっていても家に帰りたいと駄々をこねます。
入居前の家では、敷居があるのでつたい歩きであっても非常に危険ですし、ヘルパーたちに助けてもらうにも、もう限界でした。
「ここは、牢獄だよ」とも言います。
家にいても自由がきかなかったのですから、どこにいても牢獄なわけですが気持ちはよくわかります。
母のようにさほど認知が進んでいない人間はまだよいのですが、もっと若い認知症の入居者の「脱獄」対策として外部に出るドアには番号によるキーロックがかけられています。しかもボタンの上にはさらに木製のカバーがかぶせてありとがった細い棒状のものでつつかないと押せないようになっています。
父がまだ生きていた頃、ある病院から他へ転院する必要が生じ一旦、タクシーにのって帰宅したことがあります。父は無口な方だったので何もいいませんでしたがタクシーの窓越の景色を見る目は生き生きとしていました。
だから母には外の世界に触れて自由を感じてもらうように晴れた日には、車いすに乗って近所をひとまわりします。
「あ~。娑婆の空気はいいね」
と、完全なる牢獄扱いです。
(つづく)
追記2017年5月25日)この母も今年亡くなりました。
0 件のコメント:
コメントを投稿