2006年5月19日金曜日

コンピュータ黎明期(5) ~ CAD担当拝命 ~

上司筋からの指示は、新型のCAD(Computer Aided Design)を導入するので専任スタッフとして関わってほしいというものでした。
当時、あたしはデザイナーとしては干されていたので(たぶん)、ちょうどあまっているのが居るという程度だったのだと思います。

CADというと前の記事の通り、使えないTSO上の図面といったイメージしかなかったのでモチベーションは下がりました。
状況的には干され具合に一層磨きがかかったというところ。
ところが、このプロジェクトがスタートしてみると、CAD担当をあたしに命じた指揮系統と上司の系列が変わることになりました。

そして、新しい上司たちがことごとくご機嫌な人々でした。
なにしろ、珍しいCADを大枚はたいて導入するのだから部屋ごとつくってしまえときました。家具から何から自分たちで選んで一般のデザイナーたちとは格段に違う環境が用意されました。

このCADとはInterGraph。VAX/VMSというOSで動く三次元CADのマシンです。
特別室に入ったInterGraphは二台。
ここに自分以外、数人、似たような(気の毒な)境遇の人材が配置されました。
InterGraphの姿を記しておきます。

大型のテーブルの上に二大モニターが並んでいる。テーブルはデジタイザー。今で言うタブレットの巨大なやつです。これらはFRPなり樹脂型で整形され た筐体で角丸に一体化されている。デジタイザの右端には、テーブルとモニターを上下、傾斜角をモーターで変えることができるボタンがついている。ボタンを押すとモーター駆動でブーンと全体が動く。
つまり宇宙司令官のテーブルなのです。椅子もデザイン部門の長ですら座ったことのないような超高級OAチェアー。天井にはアンビエント・ライトを配し気分はまさに昼寝!!


この豪華マシンを一人で専有して使うことができるのです。もうTSOでシステム管理者に待たされることもありません。
この巨大マシン、実はダム(バカ)端末で本体は隣に隔離されたマシンルームに鎮座しています。
部屋の一隅には、マシンをブートさせるためのコンソールが一台たたずんでいます。
「コンソール」はそれ自体がドットインパクト・プリンターでキーボードからコマンドを入力してVAX/VMSを起動(ブートアップ)します。

なんで端末からコンピュータを立ち上げずに、別においてあるタイプライターから起動するの?
今でも理由はわかりませんが、コンピュータを目覚めさせるためにやけに複雑な手順が必要で、そのすべてを自分で管理できるのが妙に嬉しいというオタクゴコロ。

もちろん、この時点ではOSというものが何か・・というよりOSとアプリケーションの違いも、・・・つまり何も知りませんでした。
それでも、これまで内線電話で専門家にお願いしていた作業が白日の下にさらされたのです。
あたしは自由になりました。

嬉しかったことはもうひとつあります。InterGraphを買うと、もれなく10日間(くらいだったか?)集中セミナーがついてくるのでした。

われわれ素人デザイナー(ユーザー)の導き手として社内のシステム部門から配置されたコンピュータ専門家二名は頭脳明晰で、またとないチャンスに一計を案じてくれました。

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