2011年5月18日水曜日

クリスティーナの世界

誰も聞いてないよ、なんて言われちゃいそうですが(笑)、あたしがこの世で一番好きな絵は、アンドリュー・ワイエスの「クリスティーナの世界」であります。

70年代に建築家、ロバート・ヴェンチューリの著書ですっかりおなじみになった絵です。

アメリカ人にとっての「家」の原風景なのだろうと思いますが、日本人のあたしが見ても、とにかく懐かしい。

何年も行っていませんがニューヨークに行くと必ずMoMAで展示されている、この絵を見に行くことにしています。

さて、昔の話。画集「クリスティーナの世界」という図書がありまして、とうの昔に絶版になっています。しかたないので図書館で借りては返しの繰り返しをしていましたが、しまいにはどうしてもほしくなりました。

神田の古書店街を歩いても見つかるべくもなく、結局アマゾンの中古本で発見。原書版を手に入れることができました。この時ほどアマゾンが便利だと思ったことはありません。

ワイエスの描く空間には人の世のあまねくうつろいが凝縮されています。
カーテンの皺のひとつひとつに、置き捨てられたバケツの影に、胸がしめつけられるような感動を覚えます。

無名に生まれて無名に育ち、無名のまま死んでいく美しさ。

ワイエスが描いたオルソン姉弟はワイエスのせいで結局無名のままの人生では済まされなくなってしまいます。

でも、「クリスティーナの世界」で記されているワイエス一家との交流の様子をみると、彼らはあくまでも謙虚で誇り高い。
アメニモマケズ。

手に入れた画集は日本円で二万円。ちょっとした値段ですが、出費にみあう充足感。




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